算数の説明が、どこかおかしい…不定方程式に「解があるとは限らない」という「数学の本質」を突いた、あまりに鋭すぎる「小学生の疑問」

なるほど! そうだったのか、数学。

数学を納得して理解するには、小学校から高校まで学ぶ算数・数学のうち、とくに押さえておくべき「重要キーワード」を一つひとつ理解して、体系的・構造的に学ぶことが大切です。

いまや、数学は、受験対策などの交換価値や、便利な道具として使用価値の有無ばかりが強調されるようになってしまいましたが、本来は、生活経験や体験によって得られた知識をベースにした素晴らしいな思想体系です。そして、その思想は、小学校の算数という初歩の段階から、しっかり流れ続けているのです。

学生のころに新鮮な気持ちで学んだ算数や数学を、いまふたたび深めることこそ、数学の本質に迫る「近道」といえるでしょう。

好評の『なっとくする数学記号』(ブルーバックス)の著者にして、数学教育を知り尽くした専門家による「学びなおし」の決定版『学びなおし! 数学 代数・解析編』。そこで取り上げた数学を理解する29のキーワードから、さらに厳選したトピックをご紹介していきます。

今回は、2つの未知数がある不定方程式「ディオファントス方程式」についての解説です。

【書影】学びなおし! 数学

*本記事は、『学びなおし! 数学 代数・解析編 なっとくする数学キーワード29』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

ディオファントス方程式

ここではディオファントス方程式の話題についてお話ししましょう。

係数が整数である多変数の方程式で整数解を求める問題をディオファントス問題といいます。そして、そのための方程式をディオファントス方程式といいます。

ディオファントスについては後ほど説明しますが、250年頃にエジプトのアレキサンドリアで活躍した古代ギリシャの数学者で生没年不詳です。「代数学の父」と呼ばれています。

小学6年生の算数では、次のような問題が出てきます。

問.1箱3個入りのドーナツと2個入りのドーナツが売られています。子ども会でドーナツ30個が欲しいとき、それぞれ何箱買えばよいですか?

3個入りをx箱、2個入りをy箱とすれば、次のような方程式ができます。

3x+2y=30 ……(ア)

未知数が2つで方程式が2個であれば普通の連立方程式ですが、このように未知数が2個で、方程式が1個の方程式はxとyに数値を入れて求めていくしか方法がないようにみえます。このような方程式がディオファントス方程式です。一般には不定方程式といいます。

算数の場合は、数表を書いて答えを見つけます。まずx=0, y=15やx=10, y=0は、すぐわかります。小学生でも次のようにして解けます。

【図】x、yの数表数表を書けば、小学生でも解ける

ところが、次のような子どももいます。

鋭い! 問題に作為的な匂いを嗅ぎ取った小学生!?

この問題について質問をされたお父さんは、教科書のように表を使って説明したそうです。すると、"教科書の解き方は知っている。それでいつも答えがうまく見つかるのか? その理由を教えて”というのです。

いやいや、子どもは予想以上に鋭いのです。この問題にどこか作為的な匂いがしたの でしょうし、関心もあるようです。

確かに、ディオファントス方程式にはいつも解があるとは限りません。

(ア)は上の表のように整数解を持ちます。しかも、ただ一通りではありません。

ここからは、この子どもさんの質問に答えることにしましょう。

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