算数の説明が、どこかおかしい…不定方程式に「解があるとは限らない」という「数学の本質」を突いた、あまりに鋭すぎる「小学生の疑問」
- 係数a = 3, b = 2の最大公約数は1です。したがって、ウよりua + vb = 1を満たす整数u, vがあります。
u=1, v=−1とすればよいわけです。
3×1+2×(−1)=1
(上式のうち、3と2は方程式の係数、1は最大公約数)
- そこで、両辺を30倍します。
3×30+2×(−30)=30
最初の方程式は3x+2y=30です。
-
下図の式から、さらに変形して
3×(x−30)+2× (y+30)=0
→3×(x−30)=−2×(y+30)
となります。……(3)
-
(3)より、3と2は互いに素なので、(x−30) は−2で割り切れなければなりません。
よって、(x−30) =−2k(kは任意の整数)とおけます。
これを4. に代入して、
−6k=−2×(y+30)→3k=y+30
(x−30)=−2k,3k=y+30
⇒x=−2k+30, y=3k−30(kは任意の整数)
実は、この最後の式が(ア)の一般解といわれるものです。kに適当な整数を入れて出てくるすべての数値が、(ア)の整数解というわけです。
つまり、無数の解があるということになります。
ドーナッツの問題にあてはめてみる
この算数の問題の場合はx≧0, y≧0なのでkの範囲が決まります。
x=−2k+30≧0とy=3k−30≧0から、30/3=10≦k≦ 30/2=15の範囲の整数です。k=10, 11, 12, 13, 14, 15ということになりますので、答えは次の6通りになります。
k=10のとき、x=10, y=0
k=10のとき、x=10, y=0
k=11のとき、x=8, y= 3
k=12のとき、x=6, y= 6
k=13のとき、x=4, y= 9
k=14のとき、x=2, y=12
k=15のとき、x=0, y=15
算数のように表を書いて答えを見つける場合でも、x=1から順次代入してyの値を求めますので、結構手間がかかるのです。
そこで、この方程式の一般的な定理を述べておきましょう。
不定方程式の一般的な定理
次のような不定方程式を考えます。|a|は「aの絶対値」という意味です。
ax+by=c(a, b, cは整数とする)
この方程式が整数解を持つための必要十分条件は、|c|が|a|と|b|の最大公約数で割り切れることである。
これに照らせば、先ほどの小学校の問題はa=3, b=2, c=30なので整数解を持ちます。こうして、先ほど表で求めたように整数解が見つかることになるのです。
子どもたちに説明するのは少しシンドイですかね。
係数|a|, |b|の最大公約数で|c|が割り切れない場合は、整数解がありません。たとえば、ドーナツ1箱4個入りと8個入りの箱があり、合計で30個買うとしたら、その方程式は4x+8y=30となりますが、この場合には整数解は存在しません。
また、正係数の不定方程式ax+by=cを考えたとき、その係数a, bが互いに素であれば常に整数解を持ちます。
学びなおし! 数学 代数・解析編 なっとくする数学キーワード29
ロングセラー『なっとくする数学記号』の著者にして、数学教育を知り尽くした専門家だから書けた、「学びなおし」の決定版!