昼間の空は何色かと聞かれれば、誰もが青と答えるだろう。一方で、夜空が暗いのは単に我々の目の感度が悪いだけのことであり、きちんと測定すれば一定の明るさで夜空もまた輝いていて、色を持っているはずなのだ。
いったいなに色になるだろうか?
これが実は、クリーム色に近い感じになる。
宇宙といえば漆黒の闇に星や銀河が浮かんでいるイメージだが、よく目をこらせばその漆黒の宇宙空間はクリーム色に輝いているのである(拙著『宇宙の「果て」になにがあるのか』のカバーにその色を使用しているので、興味のある方はぜひ本を手にとっていただきたい)。
見えている宇宙は「ほんの一部」
さて、「宇宙の果て」と言った場合に最も普通に想像する、「空間方向に広がる宇宙の果て」はどうなっているか、という問いに対する答えを考えてみよう。
すでに述べた通り、現在の宇宙で直接観測可能な領域は、宇宙誕生から現在までに光速で伝わる距離、すなわち宇宙の地平線(半径464億光年)の内側に限られる。
だがこれまでに説明してきた宇宙論の成果に基づいて、これよりずっとずっと大きな領域まで宇宙がどのように広がっているか、かなりの自信を持って述べることができる。そのカギはインフレーションである。
現在の「観測可能な宇宙」の内側には、どの場所にも極めて均質な宇宙が存在している。それはなぜか?
その答えとしてもっとも有力なのが、もともと小さかった均質な領域が、宇宙の初期に急激に膨張したとするインフレーション理論である。
インフレーションの時期にどれぐらい宇宙が膨張したか、その正確な数字はわからない。だが、今の地平線内の領域が一様等方に整えられるためには、宇宙の大きさが少なくともざっと10の30乗倍(=100億倍の100億倍のさらに100億倍)になったと考えられている。
これは最低限ということであり、本当は10の40乗倍、あるいは10の50乗倍かもしれない。