いずれにせよインフレーションは、宇宙創世の神様が宇宙をあらかじめ一様密度に、かつゆがみのない平坦な空間に整地するような作業であるが、この「整地作業の範囲」がちょうど今を生きる我々の「観測可能な範囲」と同じぐらいになっていると考える必然的な理由は全くない。
「観測可能な範囲」は宇宙開闢からその時までに光が伝搬する距離であり、観測者が宇宙のどの時代にいるかによって変わるからだ。
ということは、インフレーションによって整地された領域は現在の地平線よりはるかに(具体的には10の何十乗倍という感じで)大きく広がっていると考えるのが自然である。
Photo by NASA Goddard Space Flight Center / Flickr
つまり、インフレーションを認めるのであれば、空間方向に広がる宇宙の果てについてまず確実に言える一つの回答は、「半径464億光年の(観測可能な)宇宙の果てよりはるかに大きな領域まで、一様かつ等方で、ゆがみのない平坦な宇宙空間が広がっている」ということである。
「宇宙の外側の宇宙」の外側は……
「それでは、インフレーションで整地された領域を超えた大きさでは、宇宙はどうなっているのですか?」という質問がただちに来そうである。
ここから先はまた、現代の科学知識では自信を持って答えることができない領域となる。事実、これを真剣に研究している研究者もほとんどいないのが実情だ。
それでも、幾つかの考察は可能である。一つの問いかけとして、「宇宙空間は無限に広がっているか、あるいは有限な体積を持つか?」というものから出発しよう。
ここで詳しく述べることはできないが、たとえば我々の住む宇宙が「体積は有限」だが「果ての無い宇宙」であるということも物理的にはあり得る。
いったい、それはどんな宇宙なのか? 興味のある方は『宇宙の「果て」になにがあるのか』をぜひご覧いただきたい。
『宇宙の「果て」に何があるのか
最新天文学が描く、時間と空間の終わり』
戸谷 友則 著