国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。
ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
マーケット縮小の地域差という難題
一般消費者を相手として商品やサービスを対面販売する業種の場合、経営を成り立たせるためにはエリア内に一定規模の消費者(商圏人口)が必要だ。
理髪店や美容院のように保管や移動させられないサービスは、商圏人口の減少がそのままその地域での存続の可否に直結する。どれくらいの商圏人口を必要とするかは業種によって異なる。
顧客の対象年齢が絞られた業種は商圏人口の動きに、より敏感にならざるを得ない。子供が少なくなれば進学塾は成り立たない。産科医院だって、妊娠し得る年齢の女性人口が激減したのでは維持できない。対象年齢の人口が多いエリアへと引っ越すか、“商売替え”することになるだろう。人口減少によって国内マーケットは縮小していくが、難しいのは国内マーケットの縮小スピードの地域差が大きいことである。
存続し続けられるか否かも大きな問題だが、そこに至るまでの間、対面型販売の小売企業を取り巻く経営環境は大きく変わる。多くの業種がビジネススタイルの変更を突き付けられるだろう。
例えば、身近な存在である食品スーパーマーケットだ。
人口増加とともに拡大してきたため、売り上げを伸ばすためのノウハウの多くも人口拡大を前提として編み出されている。代表的なのが「ロスリーダー」と呼ばれる手法だ。集客数をアップさせるため収益を度外視した極端に低価格な目玉商品を用意するのである。目玉商品で原価割れしても、関連購買や「ついで買い」を誘発できるというのが狙いだ。利幅の大きい商品とそうではない商品を売り場に合わせ置き、原価率を総合的にコントロールするのである。