塩分制限なし、ルールなし、認知症でも施錠ロックなし…!看取り医が見つけた、本当に居心地のいい「格安の“終の棲家”」

茨城県つくば市で訪問診察を続ける『ホームオン・クリニック』院長・平野国美氏は、この地で20年間、「人生の最期は自宅で迎えたい」という様々な末期患者の終末医療を行ってきた。患者の願いに寄り添ったその姿は、大竹しのぶ主演でドラマ化もされている。

6000人以上の患者とその家族に出会い、2700人以上の最期に立ち会った“看取りの医者”が、人生の最期を迎える人たちを取り巻く、令和のリアルをリポートする――。

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看取り医がみた「最高に居心地が良い施設」

1億円払っても幸せは掴めない。高級老人ホームに潜む罠についてリポートした、前編「超高級老人ホームの大浴場に「排泄物」が浮いていて大騒動…!看取り医もうんざりした、70代半ばになっても「学歴や肩書に執着する」残念な入居者たち」より続きます。

ちまたでは高級老人ホームが出現し、私の患者さん達の中にも「お金があったら入りたい」と語る人もいるが、これはそんな思いを吹き飛ばす話である。

私が見つけた最高に居心地のよい終の棲家は、私の地元つくば市にある。入居金はゼロ。拙著『70歳からの正しいわがまま』にも登場する、サービス付き高齢者向け住宅『ぽらりす』である。

ちなみに最高と言っておきながら矛盾しているが、第一印象は最悪だった。

いまでこそ自前の建物を建てたが、私がはじめて知ったときは、借り主が逃げ出した古びたアパートをそのまま使っており、私自身、違法施設を疑って尻込みしたほどの「ヤバい施設」に見えたからだ。

『ぽらりす』の昔の施設は、大竹しのぶ主演のドラマのロケ地にも使われた (TBSのHPより)
 

というのも『ぽらりす』は、開業当初は借り主が逃げてしまった古びた四階建てのアパートをそのまま使い、次いで入居したのは、元はお好み焼き店だった建物を最低限のリフォームを加えただけの施設だったからだ。

私は貧困にあえぐお年寄りを粗悪な施設に囲い込み、生活保護費を申請させ、そのほぼ全額を詐取する“貧困ビジネス”ではないかと疑ってしまった。

だから、大腸がん末期の女性(当時75歳)の居場所が見つからず、途方に暮れていたときに、知人の医療関係者から「こんな施設があるよ」と紹介されて見学に訪れたときも、「これはまずいよな。万が一、保健所の指導が入った日には、関係している訪問医として自分も巻き添えをくらうんじゃないか」とすら思ってしまったのである。

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