「炎症」とは
ケモカイン以外のサイトカインは、主として周囲の食細胞の活性化をうながす。気合を入れるわけである。先にのべたように食細胞は病原体を食べると活性化するが、周囲からサイトカインをたくさんあびたときにも活性化する。
それから、周囲の血管壁をゆるめる作用がある。血管壁をゆるめておかないと、せっかくケモカインでよびよせた免疫細胞たちが、血管から抜け出せないのだ。
これらサイトカインの作用によって、病原体が侵入した現場には、まずは食細胞がぞくぞくと応援にかけつけて活性化する。この状況を「炎症」という。最初に立ちはだかる食細胞はおもにマクロファージで、まっさきに応援にかけつける食細胞はおもに好中球(図1‐2)である。応援のマクロファージは少し遅れてかけつける。
好中球は中性の色素に染まるのでこの名前があり、ふだんは血管のなかを循環している。数が多いのと、強い殺菌作用をもっていることで、はたらき出すとマクロファージより強力だ。ただし寿命は二~三日と短い。病原体を倒して死んだ好中球の死骸が膿(うみ)である。
インターロイキンやインターフェロンには、ほかにも、からだじゅうの細胞に臨戦態勢をうながす作用などがある。
サイトカインには、ここにあげた以外のグループもあるし、ほかの作用もたくさんある。サイトカインだけで本が数冊書けてしまうくらいだ。ここでは、周囲の仲間に気合を入れたり、応援部隊をよびよせたり、からだじゅうの細胞に臨戦態勢を命じたりすることを頭に入れておこう。
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さらに「新しい免疫入門 第2版」シリーズの連載記事では、免疫学の最前線について詳しく解説しています。
初回<スパルタとアテネの戦いに記された謎の事象「二度なし」…2500年の時を越えついに解き明かされる「真実」>を読む
■目次
第1章 自然免疫の初期対応
第2章 獲得免疫の指導
第3章 B細胞による抗体産生
第4章 キラーT細胞による感染細胞の破壊
第5章 複数の免疫ストーリー
第6章 遺伝子再構成と自己反応性細胞の除去
第7章 免疫反応の制御
第8章 免疫記憶
第9章 腸管免疫
第10章 自然炎症
第11章 がんと自己免疫疾患