食細胞は病原体を食べる
ミステリー小説を読んでいると、冒頭で淡々と語られる話があとでおこる大事件の伏線になっていたりする。本書はミステリー小説ではないが、それに似たテイストを味わえる場面がときどき出てくる。
たとえば、このあと2章、3章、4章と読み進めると、あるところで1章にもどってくる。ああ、こんなふうにつながっていたんだ! と実感できることと思う。そんなことも期待して読み進めてほしい。
さて、食細胞は、相手かまわずなんでも食べる。すなわち、わたしたちのからだの細胞の死骸や老廃物などを、手あたりしだい細胞膜がつつみこみ、食胞として細胞内に取りこんで消化してしまう。結果的に、侵入した病原体も食べる。試験管で培養した食細胞にビーズ玉をあたえると、それも食べてしまう。まるで、からだのなかのおそうじ係のようだ。
食細胞は細胞の死骸、老廃物、病原体からビーズまでなんでも食べるからだのお掃除係 photo by gettyimages
しかし、相手かまわずなんでも食べるなら、わたしたちのからだの生きている細胞も食べてしまうのではないか? そうはならないので安心してほしい。食細胞はなんでも食べるが、わたしたちのからだの生きている正常な細胞には手を出さない。なぜなら、死んだ細胞の表面には“食べて”という目印が出ているが、生きている正常な細胞の表面には“食べないで”という目印が出ているからだ。
生体防御の最前線で病原体を食べてやっつける食細胞のはたらきは「自然免疫」とよばれている。自然免疫は、下等生物から高等生物まで共通にもつ基本的な免疫のしくみで、主として食細胞が担当している。