最初に立ちはだかる食細胞
侵入した病原体がからだのなかで増殖したら大変だ。毒素をまきちらし、細胞を破壊し、わたしたちを死にいたらしめる危険さえある。
そうした病原体を排除するためにそなわる生体防御のしくみが免疫である。これから、その複雑で巧妙なしくみを、順を追って見ていくことにする。
ころんですりむいたひざ小僧から病原体が侵入したとしよう。バリアを突破してからだの末梢組織に侵入した病原体の前に最初に立ちはだかるのは食細胞である。
代表的な食細胞であるマクロファージを図1‐1に示した。マクロファージは大食細胞ともいい、白血球の一種である。なお、本書に登場する免疫細胞は、すべて白血球である。役者が出そろう7章末のコラムに一覧にしてまとめてある。
昔の教科書では、食細胞を「相手かまわずなんでも食べるだけの原始的な細胞」と説明していた。「相手かまわずなんでも食べる」のはそのとおりだが、「食べるだけの原始的な細胞」は少々いいすぎであることが、まもなく二一世紀という時期の研究でわかってきた。筆者(審良)も研究の一端にかかわった一人である。
食細胞は「原始的な細胞」どころか、仲間の一部は、免疫の「司令塔」の役割までになっているほどだ。その「司令塔」ぶりはおいおい説明するとして、まずはバリアを突破して侵入した病原体に、食細胞がどう対応するかを見ていこう。