2024.07.13

人生はホルモンに支配されている…文筆家・馬田草織さんがたどり着いた「自分のご機嫌を取るためのレシピ」

イライラ、モヤモヤ、グッタリ…。仕事や育児の都合とは関係なく、人間にはいろいろな感情が突如として訪れるもの。文筆家でポルトガル料理研究家の馬田草織さんは、料理は「毎日をご機嫌で過ごすための生活の術」と教えてくれました。誰かのためではなく、自分のために作るちょっとした料理が、自分を見つめなおす機会を作ってくれるのです。 日常で使えるレシピとともに、今年高校生になった「JK娘」の子育てに奮闘する日々のエッセイをつづった馬田さんのインスタグラムは、フォロワー3.5万人の支持と共感を呼んでいます。新刊『ホルモン大航海時代 ポルトガルと日本で見つけた自分のための鱈腹レシピ23』(TAC出版)の発売に際し、著者インタビューをお届けいたします。

ホルモンに左右される人生

――馬田さんは出版社勤務を経て35歳で独立、フリーランスの文筆家、そしてポルトガル料理研究家としても活躍されています。今回執筆された著書のタイトルは『ホルモン大航海時代』、とてもユニークなタイトルです。

独立してから結婚、出産、離婚、子育てと経験するなかで、ずっと忙しく仕事をしてきました。それが40代半ばに差し掛かったある時期、突如無気力の嵐に襲われて地蔵のように動けなくなり、いつものペースで仕事ができなくなったんです。これは普通じゃないと感じて仕事仲間に打ち明けたら、「それ、更年期に入ったんだよ」と言われて。それまで更年期って、汗が止まらなくなったりイライラするだけのことだと思っていたので、最初はピンときませんでした。単純に、知識がなかったんです。

馬田草織さん/写真・伊藤徹也
 

それから産婦人科を訪ねたり自分で調べていくうちに、更年期のホルモン活動には、倦怠感や頭痛、めまい、耳鳴り、集中力の低下を引き起こすなど、深刻な症状がたくさんあるとわかって。驚くとともに、そうだ、そもそも人間は生まれたときからホルモンに活動を左右される動物だったんだと、改めて思い知らされたんです。

さらに自分が更年期のホルモンの嵐に巻き込まれるとほぼ同時に、娘も思春期に入りました。彼女もまた、思春期ホルモンに心身を激しく揺さぶられている。思春期だって相当厄介です。その姿に自分の思春期の頃の葛藤を重ねたりして、ようやく人生を俯瞰して振り返られるようになりました。

考えてみれば人生そのものも、自分では思いどおりにならないことばかりです。自分という存在は、意思や努力とは別に、ホルモンや縁や運命に誘われる不確定な存在なのだと、改めて自覚するようになりました。大海原を漂う小舟のようなイメージですね。

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