人生はホルモンに支配されている…文筆家・馬田草織さんがたどり着いた「自分のご機嫌を取るためのレシピ」
ホルモンに左右される人生
――馬田さんは出版社勤務を経て35歳で独立、フリーランスの文筆家、そしてポルトガル料理研究家としても活躍されています。今回執筆された著書のタイトルは『ホルモン大航海時代』、とてもユニークなタイトルです。
独立してから結婚、出産、離婚、子育てと経験するなかで、ずっと忙しく仕事をしてきました。それが40代半ばに差し掛かったある時期、突如無気力の嵐に襲われて地蔵のように動けなくなり、いつものペースで仕事ができなくなったんです。これは普通じゃないと感じて仕事仲間に打ち明けたら、「それ、更年期に入ったんだよ」と言われて。それまで更年期って、汗が止まらなくなったりイライラするだけのことだと思っていたので、最初はピンときませんでした。単純に、知識がなかったんです。
それから産婦人科を訪ねたり自分で調べていくうちに、更年期のホルモン活動には、倦怠感や頭痛、めまい、耳鳴り、集中力の低下を引き起こすなど、深刻な症状がたくさんあるとわかって。驚くとともに、そうだ、そもそも人間は生まれたときからホルモンに活動を左右される動物だったんだと、改めて思い知らされたんです。
さらに自分が更年期のホルモンの嵐に巻き込まれるとほぼ同時に、娘も思春期に入りました。彼女もまた、思春期ホルモンに心身を激しく揺さぶられている。思春期だって相当厄介です。その姿に自分の思春期の頃の葛藤を重ねたりして、ようやく人生を俯瞰して振り返られるようになりました。
考えてみれば人生そのものも、自分では思いどおりにならないことばかりです。自分という存在は、意思や努力とは別に、ホルモンや縁や運命に誘われる不確定な存在なのだと、改めて自覚するようになりました。大海原を漂う小舟のようなイメージですね。