イヤな奴ほど「成功」する…部下を退職させても「無責任な上司」の正体

一番厄介な「ゲミュートローゼ」

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

一番厄介な「ゲミュートローゼ(Gemütlose)」

輪をかけて厄介なのが、ドイツの精神科医、クルト・シュナイダーが「ゲミュートローゼ(Gemütlose)」と名づけたタイプである。「ゲミュート(Gemüt)」とは、思いやりや同情心、羞恥心や良心を意味するドイツ語であり、そういう高等感情が欠如している人が「ゲミュートローゼ」だ。シュナイダーは「ゲミュートローゼ」を「精神病質人格」の一種とみなしている(『精神病質人格』)。

「ゲミュートローゼ」は、日本語では「情性欠如者」と訳される。「ゲミュートローゼ」は罪悪感を覚えることを徹底的に拒否し、反省も後悔もしない。もちろん、良心がとがめることも一切ない。

実は、政治家や実業家などの社会的成功者にも「ゲミュートローゼ」は少なくない。「ゲミュートローゼ」の成功者は、「嫌な奴ほど成功する」ような印象を与えることさえあるが、この印象はあながち間違いとはいえない。

その最大の原因は、意志が非常に強く、他人の屍を超えてすら己の信じる道をひたすら突き進むことだろう。これは、「目的を貫徹するためには(目的は自我的のものと限らず、純粋の理想のこともある)、他人がどう思おうと、どうなろうと、意に介しない」からだ(『臨床精神病理学序説』)。

異常に意志が強いうえ、罪悪感や自責の念に耐えることを徹底的に拒否する「ゲミュートローゼ」は、アメリカの精神科医、M・スコット・ペックが指摘したように、「自分の罪悪感と自分の意志とが衝突したときには、敗退するのは罪悪感であり、勝ちを占めるのが自分の意志である」という状態になりやすい(『平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学』)。

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