2024.07.04

いままでの宇宙のイメージとはまったく異なる「衝撃の映像」…長野県の山中で「最新鋭の超高感度センサー」が映し出した「ダイナミックな現象」

「宇宙部の活動は朝日新聞にとって久しぶりに明るい話題ですからね」(朝日社員)
毎年のように発行部数の減少が伝えられる新聞界で、全国紙各社が新しい事業を模索している。2024年4月、朝日新聞の公式YouTubeチャンネルAsahi Astro Live(朝日新聞宇宙部)がチャンネル登録者数10万人を突破した。

このチャンネルをたった一人で立ち上げ、運営する「管理人」が、名古屋大学理学部素粒子物理学科修士課程修了の名物記者・東山正宜氏である。Asahi Astro Liveではハワイ・マウナケア山頂と、岐阜県・木曽の天文台に設置された星空カメラの映像を24時間ナマ配信し、日蝕や流星群などの「天体ショー」では数十万人の視聴者を集める。いったい、「朝日新聞宇宙部」とはどんな組織なのか。朝日になぜ、どうやってそんな組織が生まれたのか。星空撮影に懸けるサラリーマン記者の情熱――。

『朝日新聞宇宙部』連載第2回

第1回記事『「カネカネカネ!」「カネカネカネーーー!!!」…朝日新聞宇宙部の記者が目の当たりにした「流れ星への願い」』より続く。

木曽の巴御前

朝日新聞宇宙部が、東京大学木曽観測所から星空ライブの配信を始めたのは2019年4月のことだ。

木曽観測所は、「105cmシュミット望遠鏡」を有し、1974年に観測を始めた国内最高峰の天文台の一つである。

シュミット望遠鏡というタイプの望遠鏡は、広い範囲を一気に撮影できるのが特徴。すばる望遠鏡の師匠というべき存在だ。実際、このシュミット望遠鏡とすばる望遠鏡はいまも共同研究をしたり、研究者が行き来したりしている。

日本の大型望遠鏡は、岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡はイギリス製だったが、日本はこのシュミット望遠鏡でついに大型望遠鏡の国産化に成功した。

製造したのは日本光学工業(現ニコン)である。直径105cmのレンズと反射鏡を組み合わせた複雑な構造で、望遠鏡というよりも巨大なカメラレンズに近い。

ただ、シュミット望遠鏡として世界有数とはいえ、完成したのはアメリカ・パロマー山天文台の48インチ(約120cm)シュミット望遠鏡から四半世紀遅れとあって、夜空を撮影し尽くす「スカイサーベイ」はとっくに終わっていた。

大きな科学成果を出せないまま45年が経過して老朽化。このまま引退かと思われたところに2019年、大きなチャンスが巡ってきた。私は当時、この新しい試みを記事にした。