宇宙誕生を考える。「ビッグバン」の前に起きたとされる「インフレーション」の存在をたしかめる方法とは

時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。

多くの物理学者はビッグバンの前に「インフレーション」とよばれる急激な空間の膨張が起きたと考えています。では、このインフレーションの存在をたしかめるには、どうすればよいのでしょうか。宇宙誕生の物理学を考えてみましょう。

*本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

インフレーションの終わりは?

これまでの記事で見てきたように、インフレーション宇宙モデルは、ビッグバン宇宙論における問題点を解決する魅力的な方法を提供してくれます。しかし、インフレーション宇宙モデルにも問題はあります。

基本的に急激な加速をするよう「アクセル」を踏み込むのがインフレーション宇宙モデルの役割です。車の運転と同じで、アクセルを踏みっぱなしでは、加速し続けてしまい、目的地を通り過ぎてしまいます。

インフレーション宇宙モデルが、永久に加速を続けてしまうと、何もかもが薄められてしまい、物質のない空っぽの宇宙になってしまいます。このことは、我々の宇宙に多様な天体があり、そして、人類が存在することに矛盾してしまいます。

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したがって、ビッグバン宇宙論の問題点を解消する程度に急激な加速膨張をしたのち、「ブレーキ」を踏む操作が必要になります。このブレーキのかけ具合の調整が必要で、ブレーキのタイミングが遅すぎると、ほとんど空っぽの宇宙を作ってしまい、一方、タイミングが早すぎる場合、ビッグバンの問題が解消できずに残ってしまい不完全です。

インフレーションを検証するためには?

高エネルギーの物理学実験が進展し、大統一理論のエネルギーでの現象が実験的に確かめられて、次にその現象を説明できる素粒子理論が確立すれば、その確立した理論を「ザ(the)・素粒子理論」として宇宙に適用することができます。

そこから導き出された結論から、唯一のインフレーション理論が作れるはずです。もちろん、現在の人類の知識では、そんな実験は夢物語です。

しかし、提唱される宇宙のインフレーション理論が複数あればどうでしょうか。それらの理論計算を進め、その計算結果を宇宙の観測と比較することで検証して、理論の背景にある素粒子理論を実証することができるはずです。人類は、いままさにその段階に到達しています。

以前の記事で紹介したように、ビッグバン理論では、宇宙マイクロ波背景放射がその存在の痕跡となりました。

WMAPによって観測された「宇宙マイクロ波背景放射」(NASA / WMAP Science Team/2012)

では、インフレーションにはどのような痕跡があるのでしょうか?

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