2024.06.18
# 機関銃 # ノーベル賞 # パラドックス

敵国に武器を売り、自国の軍隊を壊滅させた武器商人

ダイナマイトと機関銃の発明者

戦争をするには武器が必要だ。それを調達するのは、昔から「死の商人」と言われる武器商人だった。前記事までで見た通り、鉄砲から核兵器まで売り捌き、巨万の富を得てきた戦争の黒幕たちをめぐる実話は多数ある。しかし、その実態は、日本ではあまり知られていない。

では、この謎に満ちた死の商人とは何か、彼らに共通する考え方や行動原理とはどんなものなのか。ここでは、『死の商人』(岡倉古志郎著、講談社学術文庫)から引用する。

フリードリッヒ・クルップ(巨大な「死の商人」を生み出した、ドイツの鉄鋼メーカーの創設者)

言葉の由来

「死の商人」――“the merchants of death” 文字どおり訳せば、まさに、「死の商人」である。「死の商人」とは変なことばではないか。「死の商人」とは、いったい、何だ。「死の商人」は何をあきなうのか。それは、「ベニスの商人」シャイロックのように、冷血無慈悲な商業道徳の持ちぬしなのか。「死の商人」ということばは、「死神」を連想させる点で、ひじょうに適切なことばではあるが、いきなり、このことばにぶつかると、われわれは、一応、とまどいせざるをえない。

フランス語では、“the merchants of death” のことを“les marchands de canons” といっている。日本語にすれば、「大砲の商人」である。つまり、「大砲をあきなう商人」である。ドイツでは、例の兵器王国、鋼鉄王国クルップ・コンツェルンの支配者クルップ一家のことを“Kanonen König”――「大砲王」と呼んでいるが、クルップは、あとでくわしく書くように、典型的な「大砲の商人」、「死の商人」だった。また、ドイツ語には“Krämer des Krieges”ということばもある。これは「戦争の商人」ということだ。意味は「死の商人」と同様である。

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