じつは、ここ20年ほどで「海のある天体」は、次々と見つかっている…「地球外生命の発見」が、一気に現実味を増した「衝撃的な発見」
太陽系に広がるオーシャンワールド
昔ながらのハビタブルゾーンの外側に、エウロパ、タイタン、そしてエンケラドゥスと、生命の存在が期待される天体が次々と見つかりました。地下まで含めれば、液体の水の存在はそれほど希有なことではないとわかってきたのです。そうした観点から調べなおすと、地下に液体の水(海)を持つ天体候補がさらに見つかってきました。
木星系では、エウロパのすぐ外側を回る衛星のガニメデにも、地下に水が存在する証拠が見つかってきました。ガニメデは磁場を持つため、オーロラが発生します。磁場の原因は、氷の下に電気伝導率が高い塩水が存在するためと考えられています。そして海の深さは100kmほどと考えられますので(地球最深のマリアナ海溝は約10km)、地球の海よりもはるかに大量の水をたたえている可能性が高いのです。
また、小惑星帯に存在するケレスからも、水蒸気を含む物質が噴き出ていることがハーシェル宇宙望遠鏡の観測から示唆されました。ケレスは2006年に冥王星が惑星から準惑星に「格下げ」になった際に、小惑星から準惑星に「出世」した天体です。
そのほか、木星の衛星のカリスト、土星の衛星のミマス、海王星の衛星のトリトン、さらに冥王星にも、地下海がある可能性が示唆されています。これら、ハビタブルゾーンの外側で地下海を持つ天体を総称して「オーシャンワールド」とよばれるようになりました。今後の太陽系生命探査は、火星とオーシャンワールドが2本柱となって進められていくでしょう。
これからのオーシャンワールド探査としては、ガニメデをターゲットにして2023年に打ち上げられた木星氷衛星探査「Jupiter Icy moons Explorer:JUICE(ジュース)計画やNASAが打ち上げを予定している「エウロパ・クリッパー計画」などがあります。
その動向については、『生命と非生命のあいだ』で取り上げましたのでご一読いただくこととして、ここでは、なぜこうした地球外の他の天体に、生命の痕跡を求めるのか、原点に立ち返ってその意義を考えてみましょう。