「サイボーグゴキブリ」がヒーローとなる日

エネルギー源は体液

大きさが数ミリメートル、あるいはそれ以下の「マイクロロボット」をつくろうとする研究は、1970年代から始まりました。しかし半世紀ほどを経た今でも、アリやハチのように自力で自由自在に動きまわれるロボットはできていません。金属やプラスチック、シリコンなどでできた人工物を、ただ小さくしていくだけでは無理があるようです。

そこで発想を転換し、ロボットの一部に生物の筋肉そのものや、細胞の中にあるタンパク質などを組みこんで動かそうとする研究が進められています(前回を参照)。しかしアリやハチは、ただ動くだけではなく、感覚や知能も備えています。マイクロロボットにも必要な機能ですが、やはり小型化に伴う問題を避けられません。果たして、これも「生命と機械の融合」という発想で克服できるでしょうか?

「補う」ことから「強化」「拡張」へ

「サイボーグ」とは「サイバネティック・オーガニズム」の略で、一般的には生物と機械が一体化した存在というように定義されています。筆者くらいの世代だと、まず石ノ森章太郎(1938〜1998)のSF漫画『サイボーグ009』が頭に浮かびます。特殊能力を持つように「改造」された9人の戦士たちの物語です。

同じ作者の『仮面ライダー』も、文献によってはサイボーグに分類されています。また、これも古いですが、アメリカのテレビドラマ『600万ドルの男』も、サイボーグという言葉の普及に一役買ったでしょう。自動車並みの速度で走り、パンチでコンクリートも砕ける主人公は、事故で手足や目などを失った元宇宙飛行士でした。

【写真】米テレビドラマ『600万ドルの男』米テレビドラマ『600万ドルの男』より。高速で走れる義足(上)と、車を蹴り上げるシーン(下) photo by gettyimages

こうした作品のおかげで、サイボーグには「スーパーヒーロー」というイメージがつきまといます。ただ人間の能力を強化あるいは拡張した存在としてのサイボーグは、まだフィクションにしか存在しません。現実の世界では、傷病等で失われた体の機能を義肢や人工臓器などで補っている人の一部が「医療サイボーグ」などと呼ばれています。心臓のペースメーカーや人工内耳などは、人工臓器の代表的な例でしょう。

しかし最近は「Bluetooth(ブルートゥース)」を使って、スマホから人工内耳に直接、音楽を流せる技術なども出てきています。これはある意味で、失われた機能を補う以上のことをしていると言えるでしょう。こうした改良が進むと、いずれは普通の人よりすぐれた能力をもたらす人工臓器もできそうです。『600万ドルの男』を生んだのは、まさにそのような技術でした。

実際、サイボーグがスーパーヒーローとなる日は来るのでしょうか? 宇宙空間や深海など特殊な環境では、将来、様々なサイボーグが活躍しそうです。ただ最初に登場するヒーローは、想像とは少しちがった姿をしているかもしれません。

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