地下資源が豊富な新疆は、一大化石産地でもあった!
中国西北部に位置する新疆ウイグル自治区は、中国の国土面積の6分の1を占める後代な行政区域だ。区内には砂漠が多く、砂漠の面積だけでも日本の国土面積に匹敵する。首府のウルムチ市はユーラシア大陸全体から見ても最奥地に位置し、「世界で最も海から遠い都市」としても有名だ。近年は中国政府による、現地のウイグル族をはじめとしたイスラム教を信仰する少数民族への行き過ぎた同化政策でも悪名高い。
いっぽう、新疆は順調な経済発展でも知られており、それを支えているのがが、石油や天然ガスなどの豊富な地下資源だ。新疆の豊富な地下資源は、中華人民共和国の建国以前の時期から関心を持たれており、ごく早期から地質調査がおこなわれてきた。当然、こうした古い地層も残る新疆には、化石もたくさん眠っている。中生代のものについては、特にジュラ紀後期と白亜紀前期の化石が多く見つかってきた。
新疆の発見ラッシュ
新疆で最初に見つかった恐竜の化石は、1927年の中国スウェーデン西北科学考査団に参加していた中国人地質学者の袁復礼が発見した竜脚類、ティエンシャノサウルス・チタイエンシス(奇台天山龍:Tienshanosaurus chitaiensis)だ。
さらに1963年には新疆石油管理局科学研究所地層古生物考察隊が、恐竜ではなく翼竜ながらズンガリプテルス・ウェイイ(魏氏准噶爾翼龍)の化石を見つけている(論文報告は翌年)。ズンガリプテルスは中国で最初に見つかった翼竜であるうえ、ユーモラスな音感の名前とその語感にふさわしい奇妙な形の頭骨を持つ生き物だったことから、現在でも中国の恐竜時代を象徴する古生物のひとつとして高い知名度と人気をほこっている。
その後、文化大革命による発掘・研究の中断を経たものの、新疆では恐竜をはじめとした古生物の化石が見つかり続けた。やがて1990年代末に中国東北部(旧満洲)で羽毛を持つ小型獣脚類の化石が続々と見つかり、世界の恐竜研究に新風を吹き込んだことで、中国の他の地方でも調査や発掘が盛んになると、新疆でも現在まで続く恐竜発掘の大ラッシュがはじまった。