『新世紀エヴァンゲリオン』TV版から25年、ついに最終作の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が公開されました! エヴァと言えば、物議を醸しだす凄惨な心理描写と共に、難解な科学用語がサラッと登場することでも有名です。この記事では『シン・エヴァ』をより深く楽しむため知っておくとよい科学知識を、過去のエヴァ作品を復習しながら徹底解説します。なお、『シン・エヴァ』の直接的なネタバレはありませんのでご安心ください。
じわじわ来る、『シン・エヴァ』の感動
デジタル化の波が押し寄せる世紀末の1995年、『TV版』の全26話が放送されました。一見すると、巨大人型ロボット「エヴァ」と巨大怪獣「使徒」が戦うありがちなアニメに見えます。
ところが、エヴァのパイロットである14歳の碇シンジが精神崩壊しては、綾波レイはまるで人の心を持たない人形のよう。当時としては衝撃的な内容に、良くも悪くも社会現象を引き起こしました。
特に、あまりにも前衛的だった25話26話は視聴者の怒りさえ買い、そのやり直しである『エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(旧劇場版)は、救いのない凄惨な内容でトラウマを植え付けられた視聴者が“量産”されました……。
そして10年後、原作にこだわらずにリビルドした『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が公開。初期の『TV版』を踏襲した安全安心の構成に多くの新規ファンを獲得、続く第2作『:破』では人気キャラの式波・アスカ・ラングレーと新キャラの真希波・マリ・イラストリアスの加勢でますます勢いに乗ります。
そして、第3作『:Q』。物語は突然14年後にジャンプ、碇シンジと視聴者は置き去りにされ浦島太郎状態になります。賛否両論が特に激しかった作品ですが、冒頭の宇宙に進出したエヴァの宇宙工学的に正確な描写、かつての味方同士が争っている熱い展開、戦艦ヴンダーの飛躍的に進歩した科学技術など、新しさに価値を見出す科学者視点では、『:Q』が今までで一番面白いと思ってしまったのは内緒です。
そして、8年間の充電期間を経て公開されたのが第4作にして最終作の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』です。
エヴァのライトなファンにすぎなかった私の状況も様変わりし、映画『インターステラー』の解説や『TENET テネット』の字幕科学監修を経て、エヴァを科学的に解説する使命感に駆られていました。直前に『TV版』全26話、『旧劇場版』全3作、『新劇場版』全3作を、必死にメモを取りながらもう一度見直しました。そして、心の中で正座しながら『シン・エヴァ』を見届けに行きました。
その努力は報われました……。『TV版』、『旧劇場版』、『新劇場版』の名シーンが各所にちりばめられ、供養成仏していきます。エヴァは文学ともいわれ、その醍醐味は宗教的、心理的、哲学的、音楽的なところにあります。一方で、いつもながら「陽電子○○」やら、「○○宇宙」やら、「量子○○」やら、様々な科学用語が『シン・エヴァ』にも登場しました。
そこで、ここでは『シン・エヴァ』をより深く楽しむために知っておいて損はない科学を、過去のエヴァ作品を復習しながら徹底解説します。
もちろん、科学だけではエヴァの全てを説明することは到底できません。その代わりに、エヴァに登場した科学的な要素を抽出し、できる範囲で科学的に解説していきます。