データを見れば「誰でも15分で地震予測ができる」ことをご存知か

ラボ・フェイク 第4回
人はなぜ、「科学らしいもの」に心ひかれてしまうのか……? 東京大学大学院で地球惑星科学を専攻、大学勤務を経て小説デビューし、「ニセ科学」の持つあやしい魅力と向き合うサスペンス『コンタミ 科学汚染』を上梓した作家・伊与原新氏。同氏が生み出した、ニセ科学に魅せられた科学者・Dr.ピガサスが今回、語るのは、大地震と「予知」の科学史。そこからは、科学とフェイクのゆらぎが見えてくる──。

(これまでの記事はこちらから

予知、予測、予言

前回(〈「明日朝、地震アル」と"地震予知"した科学少年がいたのをご存知か〉http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56136)に引き続き、「地震予知」にまつわるニセ科学の話である。

6月18日朝、大阪府北部を震源とする比較的大きな地震があった(M6.1)。気象庁による観測が始まって以来、大阪府内で震度6弱以上を観測した初めての地震である。はたしてこの地震は、どの程度予測されていたのだろうか?

ご存じの方もいるだろうが、阪神・淡路大震災と東日本大震災を受け、政府と地震学者たちは事実上「予知」の看板をおろしてしまった。前兆をとらえるための試みは放棄し、確率論的な「予測」によって減災につなげようという方針に転換したのだ。

政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が発表している活断層の「長期評価」や「地震動予測地図」が、その典型だろう。過去の地震活動の履歴から、「〇〇断層で今後30年間にM7以上の地震が起こる確率は○%」という風に予測されている。

大阪北部地震の震源断層はいまだ特定されていないが、関与が疑われている断層帯はある。有馬-高槻断層帯、上町断層帯、生駒断層帯だ。地震本部が出していた長期評価によれば、M7.5程度の地震が今後30年間に起こる確率は、それぞれ最大で、0.03%、3%、0.2%であった。

今回の地震は長期評価の想定よりマグニチュードが1以上小さい。この程度の規模の地震については、確率論的な予測さえなされていないというのが現状だ。

6月26日には、2018年度版の全国地震動予測地図が発表された。「震度6弱以上の発生確率がゼロの地域は一つもない。全国どこでも注意が必要」という地震本部のコメントに対しては、「そんな情報にどれほどの意味があるのか」とSNSを中心に疑問の声が噴出している。

「予知」も「予測」も使いものにならないとなると、幅を利かせてくるのが「予言」だ。必ずしも神秘的な意味ではない。まだ仮説の段階の事象や、いつかは起きるだろうという出来事が、科学的に「予言」されることは多々ある。

例えば、「いつか九州の巨大カルデラで破局噴火が起き、西南日本が壊滅状態になる」「数億年後にはすべての海水がマントル中に取り込まれ、海がなくなる」といった言説は、一定の根拠をもつ「予言」である。

大阪北部地震の直後も、夕刊紙やネットニュースで「南海トラフ巨大地震」の文字が躍っていた。阪神・淡路大震災以降、大きな直下型地震が起きるたびに持ち出される「予言」だ。これは、「南海トラフ地震の前後数十年間に、西日本の内陸部で地震活動が活発化する」という仮説にもとづいている。

不真面目なメディアや目立ちたがりの学者は、人々の耳目を集めるためだけに、こうした「予言」を声高に吹聴する。「予言」が本当に意味するところや、裏付け、妥当性などが冷静に語られることは、驚くほど少ない。

.navContents .navContents_genre ul li:nth-child(1){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/-/img_b5e617833eedeaae7025842662ab132b647.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(2){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/2/5/-/img_2540ff88c35e25062301549b5eb16b52324.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(3){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/-/img_a7ba7310c85ff6d811201aa807669020476.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(4){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/e/b/-/img_eb63fc75c067be2b4e346d1177dd646b453.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(5){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/-/img_abe953ea8bbeca517ca1c1e8aea20264478.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(6){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/-/img_44a09474c6909310bd77737b2cf0d164611.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(7){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/0/a/-/img_0a2be7b2a33731b20cea2350fd4ae90a628.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(8){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/-/img_7e673dc9fefd51d9536a14475d3d9aee610.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(9){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/f/-/img_af821209af9c81edad6dc63aa854b0fb368.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(10){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/-/img_f072464bf99bcf4d42f011c34e4f8de1479.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(11){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/-/img_da7b1bac2e3db43a4d2760193fcfa9d8558.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(12){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/-/img_435be9c5b352044abf14eecffa80b28d542.png); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(13){ background-image: url(); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(14){ background-image: url(); } .navContents .navContents_genre ul li:nth-child(15){ background-image: url(https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/-/img_ab53ea5ead6f29fedf249c9d00da02ca567.png); }
  • 【新刊案内】登山と身体
  • 【新刊案内】鉄道の科学
  • 【新刊案内】父が子に語る科学の話
  • 【新刊案内】ペンローズの幾何学
  • 【新刊案内】宇宙はいかに始まったのか
  • 【新刊案内】学びなおし! 数学
  • 【新刊案内】登山と身体
  • 【新刊案内】東洋医学
  • 【新刊案内】新しい免疫入門
  • 【新刊案内】大陸の誕生