寿司の起源は日本ではなかった!? ルーツからわかる美味しさの秘密
発酵による旨味寿司は江戸時代に広まったと言われている。しかし、いつどこで生まれたのか知る人は多くない。そのルーツをたどっていくと、なぜ寿司は旨いのか、その理由が見えてくる(ここでは原田信男『日本料理史』から一部編集のうえ引用する)。
語源からわかること
スシは、寿司・鮨・鮓とも書くが、その語源は“すっぱし”で、鮓が最も原義に近い。つまり魚に米と塩を用いて発酵させ、旨味を引き出すとともに、保存を目的として魚から作る食品が鮓である。
また塩だけで魚の内臓を発酵させる旨味も広く好まれており、日本では塩辛が代表例となるが、これに中国では鮨の字をあてた。そして祭りなどのハレのときに、保存しておいた鮓を食べることから、やがて寿司という表記が用いられるようになった。
発酵による旨味
つまり魚の発酵食品には、鮓と塩辛があるが、これらは兄弟関係にあたる。魚を塩だけに漬け込むと、アミノ酸発酵となるが、これに炊いた飯を混ぜ込むと、乳酸発酵が起こる。前者が塩辛で、後者が鮓となるが、塩辛は魚醬の一種で、ほかにも日本では秋田のショッツルや能登半島のイシル、香川のイカナゴ醬油が知られている。
鮓の原型はナレズシで、日本で最も古いのが琵琶湖のフナズシであり、吉野の鮎の釣瓶(つるべ)ズシのほか、秋田のハタハタズシや金沢のカブラズシも、この仲間に入る。
これらは米の飯による乳酸発酵を利用したものであるが、その初歩的な事例にオニギリの旨味がある。オニギリは、握ってすぐは美味しくはないが、二~三時間すると、普通のご飯とは違った旨味が出る。
これは米の飯に圧力を加えることで、内部の空気を押し出し、無酸素の状態になると、米の糖質に微生物が反応して乳酸発酵を起こすためである。すなわち魚と塩の発酵に、飯を加えるとナレズシとなり、そのままであれば塩辛や魚醬となる。いずれにしても発酵によって、保存と旨味という恵みがもたらされることになる。