いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。
『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。
『君はどう生きるか』連載第27回
『忙しい日本人にいま必要なのは「本物の孤独」…世間から離れることで見えてくる「本当にしたいこと」』より続く
ロンドンでもスマホを見てしまう日本人
スマホは、ぼくたちの孤独な時間を奪いました。「ひとりで考えること」がとても難しくなったのです。君は家にひとりでいてもひとりではありません。すぐにラインの連絡が来てしまう。いつも誰かとつながっています。一人でいても独りじゃない。ぼくはそれを「ニセモノの孤独」と呼んでいます。誰ともつながってなく、本当の独りの時間が「本物の孤独」です。(前回の記事より)
「本物の孤独」を経験する良い点は、君を「新しい世界」に連れて行ってくれることだ。
ロンドンに旅行に行った時、知り合った日本人旅行者は、いつもスマホを見ていた。そして、日本の芸能ニュースやSNSをずっとチェックしていた。ロンドンに来たのにだよ!
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その人は、ロンドンから帰る日に「ロンドンはあんまり面白くなかったなあ」とつぶやいた。
ぼくは、「それはそうだろう」と思った。だって、やっていることは日本にいるときとまったく同じなんだ。バッキンガム宮殿に行っても、ロンドン塔に行っても、ちょっと時間があると、スマホを取り出して、SNSを見ていた。