提供:積水ハウス
住宅の庭に地域の気候風土にあった在来樹種を植え、生物多様性を実現する「5本の樹」計画。同社では、これまでに累計約2000万本もの樹木を植えてきた。積水ハウスオーナーの方に、生きものが訪れる庭のある暮らしについて話を聞いた。
お話を伺ったのは…
上田さん一家
奈良県在住。お父さま、お母さま、小学生の男の子の3人で暮らしている。
家族みんなが笑顔で集う「5本の樹」の庭
積水ハウスが2001年から取り組んでいる「5本の樹」計画。“3本は鳥のために、2本は蝶のために”という思いを込め、地域の気候風土にあった在来樹種を中心とした庭づくりを提案している。お客様のご協力のもと、これまで約2000万本の樹木を植えてきた。
奈良県に住む上田さん一家も、2018年に家を建てる際「5本の樹」計画の庭づくりを行った。
一般的な庭には、外来種や華やかな園芸種などが、人気が高くよく植えられるが、「5本の樹」計画では地域の在来樹種を中心に植栽する。在来樹種はその地に生息する様々な鳥や蝶など多様な生きものが利用するため、「5本の樹」計画の庭は地域の生態系の一員として豊かな環境づくりに貢献できる。
上田さんは実がなる樹木を植えたいとコナラを選んだ。他にもイロハモミジ、ヤマザクラ、アオダモ、ソヨゴなどが庭を彩る。
庭の自然が織りなす季節ごとの美しさを楽しんでいるという上田さん。「春は新芽が出て大きくなっていく芽吹きの季節。秋にはコナラにどんぐりの実が付き、子どもが喜んで拾っています。葉が赤く染まり、落ちた葉が庭を埋め尽くすのも趣がありますね。」
積水ハウスでは2019年から「5本の樹」計画の効果検証にも取り組んでいる。生物多様性の研究をしている琉球大学久保田研究室、株式会社シンク・ネイチャーとともに、「5本の樹」計画で植栽した樹木データを解析。2021年には生物多様性保全への効果を定量評価することに世界で初めて成功した。「5本の樹」計画を行うと、それを行わなかった場合と比べ、住宅地の樹種数は平均5種類から50種類と約10倍に増加。また住宅地に約2倍の種類の鳥や、約5倍の種類の蝶を呼び込む効果があることがわかった。
生物多様性が豊かになると食物連鎖に関わる生きもの同士のバランスが保たれ、全ての生きものに心地よい空間になっていく。上田さんの庭にも多様な生きものが訪れる。
「朝起きてカーテンを開け、外を見ながらコーヒーを飲んでいるとウグイスやメジロなどの鳥がやってきます。鳴き声を聞きながら過ごす時間は、心が落ち着く贅沢な時間です」
「蝶もたくさんの種類が来ます。日常に鳥や蝶がいるのが当たり前になっています」
自然や生きものとのふれあいは暮らしの充足感につながる。上田さんは親子で一緒に、庭で生きものとふれあう時間を楽しんでいる。
「最初は、鳥について詳しくありませんでしたが、毎日見ているとだんだん名前を覚えたり、見分けがついたりしてきます。あるとき、バンダナのような模様のハクセキレイがよく来ていて、子どもと一緒に「バンダナくん」と呼んでいました。子どもは昆虫も大好きで、虫捕り網を持って走り回っています」
上田さんは庭で元気に遊ぶ子どもの姿を見て、自然が身近にあることは健やかな子どもの成長にも役立っていると話してくれた。
「夏はプール遊びやバーベキュー、冬は餅つきなど、季節のイベントを庭で行っています。みんなが楽しく集う場所として庭は欠かせません。そして自然の中で生きものとふれあい、遊んでいる子どもを見ていると、豊かな心を育む上でも大切な場所だと感じます」
庭の子育ち研究データ
積水ハウスの研究では、「5本の樹」計画などで促される生きものとのふれあいが、子どもの成長につながることがわかってきた。グラフは、庭で遊ぶ子どもたちが生き物を見かけた時の反応、また、それによる親子間のコミュニケーションについてデータ化したもの。このほか、過去1年間に子どもが庭で虫取りや生きものの観察をした人のうち、半数以上が子どもの「好奇心」や「感性」が養われたという結果が出ている。
庭で見かけた生きものに対する子どもの反応
生きものを見つけた子どもの反応上位5項目のグラフ。1~3歳、4~6歳、7~9歳の全ての年齢層で、半数以上が「観察したり」「喜んだり」するなど、好意的な反応が見られた。
庭で見かけた生きものについての子どもとの対話の有無
庭で見た生きものについて「子どもと話した」割合は全体の7割以上。4~6歳では9割。生きものとのふれあいが、親子のコミュニケーションにもつながっている。
「5本の樹」計画と住まい手の幸せに関する研究
「5本の樹」計画が環境への効果に加え、住まい手の幸せにもつながることが科学的にもわかってきた。
東京大学と積水ハウスの共同研究※で、「5本の樹」計画を取り入れた庭を通じて、生きものとのふれあい頻度を高めることが、住まい手のウェルビーイングの向上に寄与し得ることが示された。
今回の分析結果からウェルビーイング向上の程度を詳しく見ると、例えば、身近な生きもの(鳥)を見たり声を聞いたりする頻度が「まったくない」から「よくある」に増加すると、鬱症状の発症リスクが54%から34%に20ポイント減少することが推定された。
身近な生きもの(鳥)とのふれあいが鬱症状の発症リスクに及ぼす影響
※今回の研究にあたっては、「5本の樹」計画を採用いただいた首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)・京都・大阪・愛知にお住まいの積水ハウスのオーナー様を対象としたウェルビーイング等に関するアンケート結果と、土地利用(周辺の緑地面積など)及び積水ハウスが持つ樹木本数・樹種・位置情報のデータを紐づけて変数間の関係性を分析した
積水ハウスはグローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”の実現を目指し、住まい手の幸せにも、生物多様性保全にも寄与する庭づくり「5本の樹」計画をこれからも各地で広げていく。
同社は7月9日(火)に「都市の生物多様性フォーラム」を開催した。詳細やアーカイブ視聴方法は下記に記載のウェブサイトから確認できる。
【お問い合わせ】
積水ハウス
www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/
●情報は、FRaU2024年8月号発売時点のものです。
Illustration:Yoshiko Anetai Text & Edit:Saki Miyahara