平行移動対称性
「平行移動対称性」は、平面に広がる模様だけがもちうる対称性です。
多角形や文字などの図形では、平行移動すると、必ずどこかがはみ出て元の図形と同じにはなりません。周期的な平面充填模様であれば、うまく平行移動すると、もれなくどのセルも別のセルと重なり、元の模様と同じになるのです。
以前の記事〈じつは「正五角形」では「平面」を埋められない…埋め尽くす非周期タイルを、なんと「2種類」にまで絞り込んだ「驚愕のヒント」〉では、模様が周期的であることの説明を暫定的におこないましたが、「平行移動対称性」を使って言い換えると、次のようになります。
複数の方向(逆向きを除く)の平行移動対称性をもつ模様を周期的とよびます。
それに対し、複数の方向(逆向きを除く)の平行移動対称性をもたない模様を非周期的とよびます。
特に、『ペンローズの幾何学』では「一つも平行移動対称性をもたない」非周期的な模様をおもに扱います。
鏡映対称性(線対称性)
右手と左手はほぼ左右対称と考えられますが、建築物や蝶のような物体や生物などでも、中央で半分に分けると鏡映になっているケースが少なくありません。
左右対称の形状は、数学的にはその半分の形状を鏡に映したものだともいえます。
日本の義務教育で習う対称といえば、いわゆる「線対称」のことがほとんどで、日本人にはまずこの鏡映の概念が浮かぶでしょう。線対称の「2つに分ける線(鏡映軸)」は、縦である必要はありません。横も斜めもありえます。また、鏡映軸は1本とは限りません。
鏡映軸に沿って、左右半分に切った図形は同じように見えますが、左と右をぴったり重ねるためには「裏返す」必要があります。
本記事で取り上げたトピックをはじめ、『ペンローズの幾何学』では、平面図形に現れる対称性や黄金比などのふしぎな性質、最新の発見である「アインシュタイン・タイル(非周期モノ・タイル)」に関する詳しい解説等を紹介しています。
ペンローズの幾何学
対称性から黄金比、アインシュタイン・タイルまで
「存在しない」と考えられてきた図形「アインシュタイン・タイル」が、2023年、ついに発見されました。 非周期モノ・タイルとよばれるこの図形は、いったいどんな形状で、どこがどうすごいのか?
数学者だけでなく、アマチュア愛好家によっても偉大な発見が続々となされてきた平面幾何の世界。 パズル感覚で楽しむことができ、しかも奥行きの深いこの分野で、「次の大発見」をもたらすのは、あなたかもしれない!