「外国人」と比べてわかった、「日本人」の「腸内環境」の意外な状態
日本人は心配しすぎかもしれない*本記事は『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(講談社ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
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日本人の腸内環境
さて、「便秘がちだと大腸がんになるのではないか」と心配する人がいるのは、腸内環境の悪化が細胞のがん化を招くイメージがあるからでしょう。日本人の腸内環境はどうなっているのでしょうか? 大腸がんが増えていると聞くと、腸がだいぶ汚れているんじゃないかと不安がよぎります。
最近おこなわれた研究から、この点が明らかになりました。日本、欧米、中国など12ヵ国から合わせて750人に参加してもらい、腸内細菌と、腸内細菌が持つ遺伝子を国ごとに比較したのです。すると、国によって腸内細菌の種類が大きく異なることがわかりました。
日本人の腸内細菌は、外国人とくらべて、ビフィズス菌をはじめとする善玉菌が多く、悪玉菌がわずかでした。ご飯などの炭水化物から無駄なく栄養を引き出すのに役立つ細菌など、体に有益な機能を持つ細菌が多く生息し、不要なガスを作る細菌は少なく、さらには、日本人の腸の細胞の遺伝子はキズがつきにくいことを示すデータも得られました。
研究者らは、日本人の腸内環境は良好で、このことが平均寿命の長さや肥満率の低さと関連する可能性があると述べています。近ごろは腸の善玉菌を増やす効果をうたう健康食品が花盛りですが、日本人はちょっと心配し過ぎなのかもしれません。
この腸内環境に関連して、2015年に面白い実験がおこなわれました。アフリカ系米国人は米国白人より大腸がんの発症率が高く、同じアフリカ系でくらべても南アフリカ人より10倍以上大腸がんになりやすいことがわかっています。
この実験は、アフリカ系米国人には南アフリカ農村部の食事を、南アフリカ人には米国式の食事を2週間にわたって取ってもらうというもので、実験の前後に参加者の便を採取し、大腸内視鏡を使って腸の粘膜を調べました。すると、わずか2週間でアフリカ系米国人の腸内環境が変化して、がん細胞を殺すための免疫機能に関係する物質が増加していたのです。大腸がんをおさえる機能が高まった可能性があるということです。
これに対して南アフリカ人は、大腸の粘膜に炎症が起きていることを示す数値が大きく上がっていました。南アフリカはトウモロコシが主食で、米国式の食事とくらべて食物繊維がおよそ5倍多く、動物性の脂肪と蛋白質が少なくなっています。このことから研究者らは、米国で大腸がんが多いのは、食物繊維が極端に少なく、脂肪と蛋白質が多い米国式の食事に問題があるのではないかと推測しています。