まさしく芸能界の「闇」...警察が伝説の踊り子を“狙い撃ち”した裏にあるヤバすぎる理由

1960年代ストリップの世界で頂点に君臨した女性がいた。やさしさと厳しさを兼ねそろえ、どこか不幸さを感じさせながらも昭和の男社会を狂気的に魅了した伝説のストリッパー、“一条さゆり”。しかし栄華を極めたあと、生活保護を受けるに至る。川口生まれの平凡な少女が送った波乱万丈な人生。その背後にはどんな時代の流れがあったのか。

「一条さゆり」という昭和が生んだ伝説の踊り子の生き様を記録した『踊る菩薩』(小倉孝保著)から、彼女の生涯と昭和の日本社会の“変化”を紐解いていく。

『踊る菩薩』連載第54回

『「のちの法務大臣」「弁護士会の重鎮」「犯罪のプロ」...伝説の踊り子のために結成された夢のタッグチーム』より続く

暴力団規制の波

年明けの73年初め、美空ひばりの実弟と暴力団との関係が明らかになり、全国各地で「美空ひばりショー」のキャンセルやボイコットが続いた。終戦から四半世紀以上が過ぎ、社会が落ち着きを取り戻しつつあった。それに従い、戦後の芸能界と暴力団の、持ちつ持たれつの関係に世間は厳しい目を向けるようになった。警察は資金源を断とうと、芸能界に対し暴力団との関係を切るよう圧力を掛けていた。

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一条が狙われた背景にも、暴力団との関係があった。ストリップも興行、踊り子は芸人である。杉浦によると、ストリップが広域暴力団である住吉会や山口組の資金源になっていると、警察は考えていた。彼女に対する取り締まり強化には、わいせつ行為で社会秩序が乱れることへの懸念に加え、暴力団対策という側面があった。