今日の空模様にも、理由がある……。
古来から私たちの生活をやわらく、時に厳しく包んできた気象。さらに、ゲリラ豪雨や線状降水帯など、昨今特に耳にすることが多くなってきた現象もあります。こうした、気象現象はどのように起こり、またそれをどのように予測し、報じるのでしょうか。
そうした気象現象の、「おこるしくみ」を詳しく解説した『図解 気象学入門』、メディアなどを通じて報じられる天気予報がどのように提供されているのかを解説した『図解 天気予報入門』から、季節に合わせた気象現象と予報を解説します。
2024年はやや始まりが遅れ気味だった梅雨について、解説します。梅雨は、寒気団と暖気団のせめぎあい、と言われますが、じつは上層の大気を含めて見てみると、もうちょっと複雑なようです。好評だった高層大気の解説に続いて、梅雨の起こり方と梅雨前線の形成を立体的に見てみましょう。
※本記事は、『図解・天気予報入門』、および『図解・気象学入門 改訂版』を再編集・再構成の上、お送りいたします。
梅雨は「春の空気」と「夏の空気」のせめぎ合い、と言うけれど…
5~6月、日本付近に停滞前線ができ、雨の多い日が続く時期は「梅雨(つゆ)」と言われます。この停滞前線は、梅雨前線(ばいうぜんせん)ともよばれています。1ヵ月以上にもわたって活動し続ける梅雨前線は、どのようにしてできるのでしょうか?
この理由について、南の暖かい小笠原気団と、北の冷たいオホーツク海気団の間に形成されると解説されているのをよく見聞きします。オホーツク海気団は、図「日本付近の高気圧と気団」に示したように、冷たく湿った性質の気団で、オホーツク海に高気圧が生じたときに、存在がはっきりとします。
梅雨について小笠原気団とオホーツク海気団の2つの気団で説明することは、気団の知識で梅雨の原因をやさしく伝えるのに都合よく、「春の空気」と「夏の空気」のせめぎ合いによって前線ができていると考えることもできるでしょう。
実際には、冷たいほうをオホーツク海気団とするのは無理がある!?
しかしそうはいっても、梅雨の時期の実際の天気図をめくってみると、オホーツク海に高気圧がなく、オホーツク海気団からの気流が前線に入っていない場合でも、梅雨前線は存在しています。梅雨前線への小笠原気団の影響は間違いないとしても、冷たいほうの気団をオホーツク海気団とするのは、やや説得力に欠ける場合があるかもしれません。
そこで、中層や上層の偏西風や、南アジアから東アジア一帯に吹く夏の季節風とも関連させて、梅雨前線を見ていきたいと思います。すると、同じ日本でも、西と東では梅雨の性質が異なることが見えてきます。