物理学でも最大の謎の一つとされているものが「重力」です。では、そもそも、重力とは何でしょうか。そこで、話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』から、「重力」という言葉について解説します。
*本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
ケプラーからニュートンの「万有引力の発見」へ
「重力=万有引力」だと思っている人が多いのではないでしょうか。
重力とは、質量をもった物体を重さとして感じる力のことです。ただ、この説明だけではよくわからないですね。
そこで、この記事では重力がどのように発見されたのか、関係する天文現象を振り 返りながら見ていくことにしましょう。
17世紀の初頭、プラハ(チェコ共和国)の天文台でチコ・ブラーエの天体観測の助手をしていたヨハネス・ケプラーは惑星の運動に法則性が存在することを見出しました。これは、太陽系の惑星の運動を精密に調べた結果、導き出されたものです。
ケプラーの第1法則
惑星の軌道は、太陽を1つの焦点とする楕円をなす。この法則は「楕円軌道の法則」ともいわれます。
ケプラーの第2法則
惑星と太陽をむすぶ線分が単位時間あたりに掃く面積は一定である。この法則は「面積速度一定の法則」ともいわれます。
ケプラーの第3法則
惑星の公転周期の2乗は、楕円軌道の長半径の3乗に比例する。この法則は「調和の法則」ともいわれます。
ここで、長半径とは楕円において中心からいちばん遠い点までの長さのことです。同様に、短半径は楕円において中心からいちばん近い点までの長さのことです。とくに太陽系においては、太陽を焦点とする楕円軌道に対して、太陽からいちばん遠い点を遠日点、いちばん近い点を近日点とよびます。
このケプラーの惑星運動に対する法則を物理学の観点から再検討した結果、イギリスのアイザック・ニュートンは万有引力の法則を発見しました。
この法則は、質量をもつ2個の物体の間に働く力の大きさが、その2個の物体の質量の積に正比例し、その物体間の距離の2乗に反比例するというものです。
この力は質量をもつすべて(万=よろず)の物体に働くという意味で万有引力とよばれます。
20世紀初めまで、この万有引力が重力の源だと考えられていました。