2024.05.15
世界が驚いた…! 麻酔薬を使わず「鍼」の鎮痛効果で「手術」を行った中国からの報告
鍼灸の研究進展のきっかけ私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば<手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ><ツボに特徴的な神経構造が発見された?><漢方薬が腸内細菌の「エサ」になっている?>など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。
東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげた一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、鍼灸のメカニズム研究が本格的に始まるきっかけの一つとなった、あるニュースを紹介しましょう。
*本記事は、『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
世界が注目した「鍼麻酔」の報道
鍼灸の鎮痛メカニズムの科学的な解明は、20世紀中頃までほとんど手つかずの状態でした。研究が大きく進展する転機となったのは、1971年にアメリカ・ニューヨークタイムズの記者によって報じられた中国の鍼麻酔の記事です。鍼灸の鎮痛効果を利用し、麻酔薬を使わずに開腹手術などを行っている事例を紹介する記事が世界中に配信され、西洋医学の世界で大きな注目を集めたのです。
写真はイメージです(※本文とは関係ありません) / photo by iStock(ShutterOK)
これをきっかけのひとつとして、西洋医学の視点で「鍼灸の鎮痛効果」をはじめとした治療メカニズムを解明しようという研究が、アメリカや日本など、各国で本格的に始まりました。ちょうど1970年代から、人間の痛覚メカニズムに関係する脳や脊髄、末梢神経の神経回路や関連物質についての解明が急速に進み、その成果を土台として鍼灸による鎮痛効果についても研究が大きく進展していったのです。