海の底にある岩石は、地球のひみつをたくさん教えてくれます。なぜなら、海底にある岩石は、陸上のものよりもマントルに近く、地球内部の情報をたくさんもっているからです。そのような、深い海から採取した、地球のひみつを教えてくれる岩石たちを紹介します。
今回、取り上げるのは「マイロナイト」とよばれる岩石です。じつはこの岩石、海洋地殻が引き延ばされている証拠だったのです!(取材・文:小熊みどり)
横に引き伸ばされた白い部分に注目
この断面を見てください。
硬いかんらん石と輝石の結晶は残っていますが、全体的にきれいな縞模様になっているのが特徴です。
このマイロナイトは「変成岩」とよばれる岩石の一種です。変成岩とは、地球のプレートテクトニクスによる強い力や、地下のマグマの熱を受けて変化した岩石のことをいいます。
マイロナイトは、もとは「ガブロ(はんれい岩)」という海洋地殻をつくる岩石ですが、プレートテクトニクスの“ある運動”によって変成して、縞模様になったものなのです。
プレートテクトニクスのある運動とは?
地球の表面には、硬い岩盤でできた十数枚の「プレート」があります。プレートは地殻だけではなく、地殻の下にあるマントルとよばれる部分の一部、つまり上部マントルの一部までを含んでいます。
プレートの下にあるマントルが対流すると、それに乗っているプレートは1年間に1〜数十センチメートルの速度で動きます。
このプレート同士の境界には、「収束境界」「発散境界」「トランスフォーム境界・トランスフォーム断層」とよばれる3つのパターンがあります。それぞれを見ていきましょう。
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・収束境界
収束境界は、プレート同士が近づいていく境界のことです。
プレート同士がぶつかるとヒマラヤなどの山脈ができ、一方のプレートが他方のプレートの下に潜り込むと「海溝」ができます。その境界では地震が発生し、沈み込まれるプレート上に火山ができます。日本に地震や火山が多いのは、プレート収束境界に位置しているためです。
・発散境界
発散境界は、収束境界の逆で、プレート同士が離れていく境界です。
この場所では、プレートのあいだに隙間ができるので、地下からマグマが上がって新しい地殻をつくります。海底では「海嶺」とよばれる場所が、陸上では「地溝帯」とよばれる場所ができます。大西洋を縦断する「大西洋中央海嶺」や、「アフリカの大地溝帯」が代表例です。
・トランスフォーム境界・トランスフォーム断層
トランスフォーム境界・トランスフォーム断層は、プレート同士が左右にずれて、すれ違う境界です。
過去に何度も大地震を起こしているカリフォルニアの「サンアンドレアス断層」もトランスフォーム断層で、ここでは川がずれた跡がみられます。