これ以上は、もう無理…限界まで成長しきった雲でわかる「大気の境」。なんと「成層圏まで飛び出す」“やんちゃ”もいた

6月8日は、フランスの気象学者であるレオン・ティスラン・ド・ボール(Leon Philippe Teisserenc de Bort、1855〜1913))によって、「成層圏」が発見された日とされています。この成層圏の下限は、「かなとこ雲」を見ると、一目でわかる、ということを前回の記事でご紹介しました。

それは、かなとこ雲は、成層圏とその下層の対流圏との境界である対流圏界面によってできるから、ということですが、そもそも、かなとこ雲は、いったいどのようにできるのでしょうか。

今回は、かなとこ雲をはじめ、雲の種類と、そのできかたを見てみたいと思います。かなとこ雲が成層圏の下限の目安となる理由も見えてきます。

※本記事は、『図解・天気予報入門』、および『図解・気象学入門 改訂版』を再編集・再構成の上、お送りいたします。

雲の分類の仕方

雲は、いろいろな形のものがあるだけでなく、地上からの高さが異なります。地上から雲の高さを正確に知るのは簡単ではありません。

しかし、よく晴れた日に刷毛(はけ)ではいたように見える筋雲(巻雲・けんうん)は、わた雲(積雲)よりもずいぶんと高いところにあることが地上から見てすぐにわかります。

積雲は地上から1kmほどのところにできますが、巻雲は7~8km、あるいはそれ以上のところにできるので、かなりの高さの違いです。

【写真】刷毛ではいたように見える筋雲(巻雲)刷毛ではいたように見える筋雲(巻雲) photo by gettyimages

厚さ11kmほどの対流圏の中にできる雲は、できる高さで、上層、中層、下層の3つに分けられます。さらに、発達の仕方でも分けられ、対流によって鉛直上向きに成長する雲を対流雲といい、水平方向に広がる雲を層状雲といいます。これらの分け方を組み合わせて雲を10種類に細分し、国際的に統一した分類を十種雲形といいます(図「十種雲形」 )。

【図】十種雲形図「十種雲形」

雄大積雲が対流圏界面にまで達した「かなとこ雲」

十種雲形のうち、積雲と積乱雲の2つは、対流雲です。発生する高さ(雲の底の高さ)は下層ですが、雲頂は中層や上層にまで発達します。下層では雲の粒は水の粒ですが、上層に向かうにつれ氷粒(氷晶)が多くなります。

発達した積雲は特に「雄大積雲」とよばれ、日常語の「入道雲」がこれにあたります。ただし、十種雲形では雄大積雲は積雲と区別せず、どちらも積雲とよびます。

積乱雲は、雄大積雲がさらに発達して対流圏界面にまで達し、雲頂が平らな、かなとこ雲になっています。

【写真】対流圏界面にまで達した積乱雲「かなとこ雲」 対流圏界面にまで達した積乱雲「かなとこ雲」 photo by gettyimages

ただし、積乱雲をつくる上昇気流が非常に激しい場合、ときには雲頂が対流圏界面を突き抜けてしまうこともあり、「オーバーシュート」とよばれます。積乱雲は、激しい雨や雷をともなうことから「雷雲(かみなりぐも)」ともよばれます。雨は、発達中の雄大積雲からも降ることがあります。

「十種雲形」そのほかの雲の性質

十種雲形のひとつ巻雲は、対流圏の最も上層にできる刷毛ではいたような雲です。この雲は、上層で水平に吹く風が緩やかに上昇する部分にできたり、風の乱れの中で空気が膨張して冷やされるなどしてできます。

上層の空気は、含む水蒸気量がもともと少ないことが特徴です。つまり、上層の低い温度では少ない水蒸気量で飽和し、空気が薄い分だけ水蒸気量も少ないのです。このため雲の粒は、中層や下層のように多くは生じず薄い感じになり、一般に強い上層の風に流されて、筋状になります。

また、巻雲はすべて氷晶でできています。巻雲の比較的濃い部分から尾のように伸びる筋は、巻雲をつくる氷晶が落下しながら風で流れる姿の場合があります。航空機に乗って窓際の席に座ったら、巻雲を観察してみましょう。巻雲から氷晶が落ちるようすを確認できることがあります。

このほかの雲は層状の雲です。できる高さによって、上層、中層、下層に分けることができますが、ここでは雲の形と呼び名に注目して2つに分けて見ていきましょう。

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