心拍・呼吸など150超のデータを活用! アップルが追求する「ITと健康」の未来
次期OSで起こるさらなる進化とは?医学界との協力
デサイ氏は「私たちはほぼ毎日のようにユーザーの体験談を聞き、また、ほぼ毎日のように私たちの提供している機能が健康に影響を与えたという手紙を受け取っている」と話す。
体重計に乗るくらいのことは日常的だし、万歩計も以前から存在していた。だが、スマートフォンとApple Watchのような、常時携行し、つねに身につけているガジェットが定着したことで、人々はより精密に「自分が今、どういう状況にあるか」を把握することが可能となった。その変化が、健康な生活の維持に大きな影響を与えている、ということなのだろう。
デサイ氏は、アップルにおける取り組みと、医学界との協力について、以下のように話す。
「報告書にもあるように、研究者が主導する『研究者プログラム』では、重要な科学的テーマを研究している研究者(日本国内の研究者も含む)を支援しています。私たちは、実際に多くの時間をかけて研究をおこない、臨床検証試験を可能にし、その結果を報告し、発表しています。このような研究を公表する理由は、医学界に対し、科学と私たちの仕事の厳密さを理解してもらうためです」
アップルの狙い
医学的知識のない一般人が蓄積されたデータを単に見るだけでは、「ヘルスケア」アプリの意味は薄い。また、いくらiPhoneやApple Watchに精度の高いセンサーが搭載されているとはいえ、医療用の専門機器とは測定精度が異なるし、使い方も違う。
その前提のもとで、「ヘルスケア」アプリに蓄積されたデータが「医学的に見てどういう意味をもっているのか、どう使えばいいのか」という点について、アップルと医学界が協力し、活用が進められているわけだ。〈心臓専門医が語るApple Watch「心電図」アプリの実力〉で紹介した内容も、そうした連携の一例といえる。
「アメリカでは、いくつかの医療機関と協力し、メディカルデータの共有機能を使用する試みを始めました。つまり、電子的な医療ワークフローのなかで、個人の睡眠データや歩数データ、動作データを見ることができるようになっているのです。このような取り組みを開始したのは、『医師がそこから何を感じ、何を学び、何が役に立って、何が役に立っていないのか』を理解したかったからです」
デサイ氏は、アップルの現在の取り組みをそう説明する。
ユーザーの健康データを医師・医療機関と共有することで、医師が「この人の日常はどういう状況なのか」を知り、その情報を医療に活かそうとしているわけだ。
また、「ヘルスケア」アプリ自身も、米国、英国、カナダの保健機関から得られる健康記録データを記録し、活用できるようになっている。
単に「どれだけ運動したか」「今の心拍はどれくらいか」を知るだけでなく、そのデータを積極的に活用するしくみを整えようとしているのが、アップルのアプローチの特徴といえるだろう。
「とはいえ、我々の取り組みは、まだほんの入り口に差しかかったにすぎません」とデサイ氏はいう。日々蓄積されるデータを相互に活用して「ユーザーと医師がともに健康状態を把握する」かたちは、実践を重ねながら精度と活用の領域を広げていくことになるのだろう。
ところで、Apple Watchのユーザーであればよくご存じのように、アップルが提供する健康関連機能は、国によってサービス提供の開始時期が異なることがある。その理由はなんだろうか?