メタバースの「必須」技術
メタバースが連日のように話題になり、もうすぐスマートグラスも登場してくる……と言われている。そんな時代に向けて"必須"と考えられる技術を各社が争うように開発しているのだが、そのうちのある1つの技術に関し、今年に入ってから競うように発表が続いている。
特に、この5月の動きはめまぐるしかった。
「Google マップ」でおなじみのGoogle、「ポケモンGO」を運営するナイアンティック、そしてアップルも、同じある1つの技術に注目している。
その技術とは「VPS」──。
GPSとともにに使われる、きわめて重要な技術である。VPSこそが、メタバースにとって不可欠な「AR(拡張現実、Augmented Reality)」を日常的なものにするための基幹をなす存在だ。
VPSとはなにか、そして、メタバースとどんな関係があり、どんな生活をもたらすのかを考えてみよう。
アップルの動向
5月後半、アップルは、iPhoneに使われている自社の地図サービス「マップ」に、ある要素を追加した。正確には、ある要素を日本の都市部で使用可能にしたのだ。
その機能は「AR Walking」とよばれるのものだ。内容については、画面を見たほうがわかりやすいだろう。
各種の地図サービスには、移動先を指示する「ナビ機能」が当然のように搭載されている。どの道を通ればいいのかをユーザーに指示してくれるから、筆者のような方向音痴にはとてもありがたい存在だ。
しかし、方向音痴の人間には懸念がもう1つある。地図で行き先を示してくれるのはありがたいのだが、「どちらの方向に歩き出せばいいか」がわかりづらい、ということだ。
簡単に言えば、「AR Walking」は、そんな問題を解決するためのものだ。
iPhoneが周囲の状況を認識してくれる
行き先を定めて経路を呼び出した後に、「AR Walking」をオンにする。次におこなうのは、スマホのカメラをユーザー自身の向いている方向に向けて持つことだ。ほんの数秒、カメラを向けて道や建物を「スキャン」すると、iPhoneはカメラが向けられている方向と自身の位置を正確に把握する。
その結果、iPhoneの画面上には、周囲の風景に重なるように「向かうべき方向」への矢印と、「目的地までの距離」などが表示される。これならどんな方向音痴でも、道に迷う可能性が大幅に減る! 次の曲がり角まで来たら、iPhoneをふたたび掲げて周囲をチェックし、「こんどはどの方向へ向かえばいいのか」を確認すればいいだけだからだ。
といっても、この種の機能について、アップルは「後発」組だ。
2020年に「ロケーションアンカー」として技術発表がおこなわれ、アメリカのサンフランシスコなど、一部の都市でスタートしていたものの、東京・大阪・京都・名古屋・福岡・広島・横浜など、日本の一部都市圏で使えるようになったのは、前述のように、この5月後半からである。
アップルが「後発」なら、「先行者」は誰なのか。