"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1874年の12月18日、明治新政府による開化政策の一環として東京銀座に85基のガス灯に火が灯されました。
そもそも、ガス灯とはガスが燃焼する際に発する光を光源とした照明の一種で、1792年にイギリスの技師ウィリアム・マードックによって開発されました。
その後、1812年にフレデリック・ウィンザーの働きかけでロンドンに世界最初のガス会社「Westminster Gas Light and Coke Company」が設立され、以降、ヨーロッパ中にガス灯が普及していきました。
ガス灯の登場は文化面でも影響を与えており、かの有名な画家・ゴッホの代表作である『夜のカフェテラス』には南フランスのアルルにあるカフェテラスとともに、黄色く仄めくガス灯が描かれています。
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そんな中で、日本にガス灯が入ってきたのは少々遅れた1872年。これは当時の江戸幕府が行なっていた鎖国政策の影響ですが、開国した1854年以降は西欧列強に追いつくべく、西洋の進んだ文化や科学知識を取り入れていきました。
その一環として日本初のガス会社がお雇い外国人のフランス人、アンリ・プレグランの指導の下で、高島嘉右衛門(たかしま・かえもん)によって始まり、同年、横浜の馬車道に日本初のガス灯が設置されました。
当時の日本において、「明かり」というともっぱら行灯(あんどん)やろうそくだったわけですが、ガス灯はその1.5倍程、マントルをつけると5倍程明るかったようです(単位はルクス(lux)、ガスマントルが導入された1889年当時の値)。このことからガス灯は「文明開化の象徴」とされていました。
そして、1874年の12月18日、東京初のガス灯が銀座で点火されました。実は1872年には銀座から築地までの一帯を巻き込む大火が起きており、そこからの教訓で延焼しないレンガづくり街並みを建てる計画の一環としてガス灯が設置されたようです。
ロンドンやパリといった西洋の中心を見習ったこの銀座レンガ街計画でしたが、残念なことに1923年の関東大震災によって被災し、現在はその面影が失われています。
しかし、当時の街並みはミニチュアとして江戸東京博物館で見ることができるほか、銀座三丁目付近にある「銀座ガス灯通り」では復元された当時のガス灯を見ることができます。
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