"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
2006年の12月13日、中国の長江(揚子江)で大規模な調査が行われた結果、ヨウスコウカワイルカの「ほぼ絶滅」が宣言されました。
ヨウスコウカワイルカはクジラ目に属しているカワイルカの仲間で、その名の通り、揚子江、つまり長江に生息しています。イルカというと海に生息しているイメージがありますが、意外にも川に生息する種類のイルカも多く、例としてはガンジスカワイルカやアマゾンカワイルカなどが挙げられます。
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一説によるとヨウスコウカワイルカは 2000万年以上前から長江に生息していたとされていましたが、食肉目的の乱獲などでその数は減り、1980年ごろの調査では400頭程度が確認されるにとどまっていました。
この調査を受けて中国政府もヨウスコウカワイルカの捕獲・狩猟禁止を言い渡しますが、長江流域はただでさえ人口の多い中国の中でも人口が集まるホットスポットであり、生活排水などによる水質汚染からイルカの数はどんどん減り続けました。
20世紀最後の1997年から1999年の調査では最大で13頭が発見されるのみでした。
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そして、2006年の大規模調査ではついに1匹のヨウスコウカワイルカも発見することができなくなってしまいました。このことから同年の12月13日に「ヨウスコウカワイルカのほぼ絶滅」が宣言されたのです。
ヨウスコウカワイルカの最後の一頭が目撃されたのは2002年のことで、その写真も残っています。
「ほぼ絶滅」という言葉に引っ掛かりを覚えた方もいらっしゃるかもしれませんが、ある生物種が大規模な調査で見つからなかったとしても、どこかにその生物が生きている可能性は否定できません。極端な話をすると、調査員が見逃しただけの可能性もあるのです。
実際、2007年にはヨウスコウカワイルカらしき生物の映像が撮影されたということが話題になりました。いまだにこの生物が本物であったかは不明ですが、その後行われた2012年の調査では残念ながらヨウスコウカワイルカを確認することはできませんでした。
しかし、絶滅したと思われた生物が発見されるということはあるもので、有名なところでは絶滅したと思われていたクニマスが、東京海洋大学客員准教授のさかなクンによって再発見されたという話もあります。