「筋肉」の新たな進化が始まった

2種のタンパクとオリガミで「分子人工筋肉」を実現

私たちの細胞を支える「骨格」の1つ「微小管」は、細胞内で様々な物質が輸送される時の足場(レール)にもなっています。その足場を伝って、実際に物質を運んでいるのは「キネシン」というタンパク質です。前回(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88499)は、この微小管とキネシンにDNA(デオキシリボ核酸)を組み合わせて、群れをつくるナノサイズの「分子群ロボット」がつくられた話をしました。

一方、細胞骨格には「アクチン」と呼ばれる線維もあって、やはり足場の役目をもっています。それを伝って物質を運んでいるのは「ミオシン」というタンパク質です。

実はこのアクチンとミオシン、私たちの筋肉を動かす「モーター」でもあります。だったら似たような微小管とキネシンでも「筋肉」をつくれるのでは? そんな発想から、分子群ロボットをつくった研究者たちが、新たな挑戦を開始しました。彼らの「分子人工筋肉」は図らずも筋肉の進化を再現し、既存の人工筋肉はもちろん、天然の筋肉さえ超えるものになるかもしれません。

筋肉は裏切っているかも?

「筋肉は裏切らない!」というキャッチフレーズのテレビ番組に刺激されて、筋トレに一念発起された方は少なくないでしょう。筆者もたまに腕立て伏せや腹筋、スクワットなどをやっては、翌日の筋肉痛で一時的な自己満足に浸っています。しかし美容や健康のためには、定期的にやらないと効果がありませんね。

誰もが多少は気にしている筋肉ですが、その構造やメカニズムに関しては、必ずしもよく知らないことが多いのではないでしょうか。

例えば筋肉は、縮むことはできても自力で伸びることができません(緩めることはできます)。なので曲げた肘をもとに戻すには重力を使う、つまり前腕の重さで延ばすか、縮んだ上腕二頭筋(力こぶ)を骨の裏側にある上腕三頭筋で伸ばしてやる必要があります。この2種類の筋肉は、お互いにひっぱり合う「拮抗筋」になっているとも言えます。関節はどこも同じような構造をしています。

【イラスト】上腕二頭筋と上腕三頭筋 illustration  by gettyimages上腕二頭筋と上腕三頭筋 illustration by gettyimages

よく「背筋を伸ばす」と言いますが、この時、どちらかというと背中側の筋肉は縮んでいます。むしろ伸びているのは胸や腹側の筋肉でしょう。それでも背中が伸びているような気がするのは不思議です。ある意味「筋肉は裏切っている」のかもしれません。

ということで「分子人工筋肉」についてお話しする前に、天然の筋肉について、もう少しおさらいをしておきましょう。

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