日常のふとしたところに数学的な遊びのヒントやパズルが潜んでいます。今回は2つの題材を取り上げて、どのようなパズルが考えられるのか紹介していきます。
「日付」にまつわる数学パズル
まず1つめは、日付にまつわる題材。日付にまつわる数学の問題といえば、カレンダーを使った問題があります。カレンダーに書かれた数の規則性に関する問題を中学数学の文字式などで扱うことがあり、記憶に残っている人は多くいることでしょう。
たとえば図の赤枠のようにくくった数の和は真ん中の数の5倍になることを、文字式を使って証明する、という問題です。今回は、こういった普通の形状のカレンダーとは別に、面白い形状でパズルの題材になるカレンダーを紹介します。
万年カレンダーというものをご存じでしょうか。言葉のとおり、万年、つまりいつまでも使えるカレンダーです。
写真のように形状として通常のカレンダーのような形をしているものもあり、違いは記載された日の多さや、曜日の部分が動かせるということ。曜日をずらしていくことで、あらゆるパターンの曜日を再現できる、というものになっています(ただし、この形状のカレンダーだと、30日終わりのものでも31日まで表示されてしまうのが唯一の懸念)。一度用意したら買い替える必要もないので、非常に便利な道具なのです。
さて、今回本題となる万年カレンダーは立方体の形状をしたものです。
写真からも想像できるように、立方体の各面に数字が書かれており、立方体の向きを変えることで様々な数を表示する、というもの。さて、ここで1つ面白い疑問があります。
「万年カレンダーの立方体の各面がどういう数字の並びであれば、あらゆる日付を表示することができるのか?」
いっぺんにすべてを考えるとややこしくなるので、まずは日だけに注目してみましょう。つまり「日を01から31まで作ることができるか?」という問題になります。
立方体の面の数が6個あり、日は2つの立方体によって作るので12種類の数字を使うことができます。0から9までで10種類、そこからゾロ目の日を考えると11日、22日で1と2を2回使うことを踏まえるとこれで12種類ぴったり、完了! と言いたいところですが、実はそう簡単にはいかないのです。小さい順に数字を立方体にあてはめていくと、
A B
0 6
1 7
2 8
3 9
4 1
5 2
と並べることができます。この立方体だと01日、02日は表すことができるのですが、03日を表すことができません。ほかにも04日、05日そして30日を表すことができないのです。さて、これを表示するためにはどうすればよいのでしょうか。0の位置をAからBに変えるなどすれば済むかといったらそうでもなく、3や4などを増やそうとすると他の数字を無くす必要があり、その無くした数字を活用した日が作れなくなってしまいます。
一見、手詰まり感はありますが、以下のようにつくることで解決します。
0 6
1 7
2 8
3 0
4 1
5 2
これでたしかに先ほど表示できなかった日は表示できるようになっていますが、実はこの組み合わせだと9を無くしていて、19や29が表示できなくなっています。しかし、ここでまさかの発想「6をひっくり返したら9になる」という性質を活用して9を表現することで解決します。数字の形がこのようにひっくり返したら別の数字になる、という組み合わせがなかった場合、実現できなかった方法で立方体タイプの万年カレンダーは成立しているのです。
ちなみに月を表示できるバージョンの万年カレンダーもありますが、月に関しては01から12となるので
A B
0 6
1 7
2 8
3 9
4 0
5 1
という組み合わせで作ることが可能となります。ただ、わざわざ日を表す用と月を表す用で数字の組み合わせを変える必要性もありません。物にもよりますが、だいたいは同じ組み合わせで万年カレンダーを作っています。
非常に美しい構造になっている立方体型の万年カレンダー、唯一の弱点(曜日も立方体で表すタイプのものの場合)は曜日の表示。曜日は7種類、立方体は6面、そして曜日の漢字もひっくり返してどうにかなるものではないので……ほとんどの万年カレンダーは、土曜日と日曜日を同じ面に記載し、上下の置く向きで調整しています。何かよい解決方法があれば、筆者も方法を時々考えますが、まだ納得のいく方法は見つかっていません。