首長竜は恐竜ではありません
プレシオサウルスやエラスモサウルスに代表される首長竜は、中生代に生息した水生の爬虫類だ。竜脚類の恐竜を連想させるような長い首を持つものも多い(後述)が、分類学的には恐竜とは比較的遠い生き物で、実はトカゲやヘビの仲間に近い。
とはいえ、首長竜はネッシーなどの水生未確認生物のモデルとして広く知られている。映画『のび太の恐竜』や小説の『遠い海から来たCOO』など各種の一般向けコンテンツでもおなじみであることから、恐竜に次いで親しまれている古生物だと言ってもいいだろう。
また、1968年に福島県で発見されたフタバサウルス(フタバスズキリュウ)や、北海道で発見されたホベツアラキリュウ(発見地の穂別地域では後に「むかわ竜」の愛称を持つ恐竜カムイサウルスの全身骨格化石も発見される)のように、一昔前まで日本では恐竜化石の発見例が限られていたのに対して、良好な状態の首長竜化石の発見例が多かった。これも日本での首長竜人気の理由かもしれない。
いっぽう、日本の隣国である中国において、首長竜や魚竜などの水生爬虫類の化石発見例は意外に少ない。もちろん発見例はゼロではないが、中生代の中国大陸は陸地だった地域のほうが多かったらしく、恐竜をはじめとした陸生の生き物の化石のほうがよく見つかるのだ。
首が短い首長竜
だが、発見例が少ないことは重要性が低いことを意味しない。今回紹介するのはそんな中国の首長竜、ビシャノプリオサウルス(璧山上龍:Bishanopliosaurus)の話だ。
ちなみに首長竜(Plesiosauria)は、日本語では「首長竜」と呼ばれてはいるものの、実は長い首を持つおなじみの体型のプレシオサウルス類と、首が短いプリオサウルス類に大きく分けられる。
ビシャノプリオサウルスは、後者の“首が短いタイプの首長竜”である。なんだかややこしいが、あくまでも日本語の訳語ゆえの問題なので仕方ない(なお、中国語の場合はPlesiosauriaは「蛇頸龍」と訳されているので、この手のズレた表現は生まれない)。