新型コロナウイルスの変異種が出現
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行がなかなか収まらない。新型コロナウイルス感染症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染症だが、イギリスでは昨年の暮れになって、さらに新型コロナウイルスの変異ウイルス(VOC-202012/01)が同定された。
国立感染症研究所が分離に成功した新規変異株VOC-202012/01ウイルス粒子の電子顕微鏡写真 photo by National Institute of Infectious Diseases, Japan
「変異」というのは「起源が同じものから生じた違い」のことだが、ここでは「同種内における個体間の違い」という意味だろう。新型コロナウイルスの遺伝物質はDNAでなくRNAなので、RNAに変異が起きて変異ウイルスが進化したわけだ。
イギリス政府に保健関係の助言を行う諮問機関(NERVTAG)によれば、この変異ウイルスは従来のウイルスよりも感染力が70パーセントも強いと言う。ウイルスの本体は核酸(DNAかRNA)だが、その外側をカプシドというタンパク質の殻が包んでいることが多く、さらにその外側をエンベロープという膜で包んでいるものもいる。新型コロナウイルスは、このエンベロープがあるタイプのウイルスである。
コロナウイルスの基本構造。 S : スパイクタンパク質 E : エンベロープ (参考:国立感染症研究所)
新型コロナウイルスのエンベロープには、スパイクタンパク質と呼ばれるタンパク質がたくさん突き刺さっており、これが外側に突き出して王冠(コロナ)のように見えることから、コロナウイルスと名付けられた。このスパイクタンパク質は、ウイルスが細胞に感染するときに重要で、ここに変異が起きたために変異ウイルスは感染力が強くなったと考えられている。
感染者も70パーセント増える?
ある日、テレビでこんなことを言っていた。変異した新型コロナウイルスは感染力が70パーセント強いのだから、感染者も重症者も70パーセント増えるでしょう。いきなりそう言われるとそんな気もするけれど、でも本当にそうだろうか。