先日発表された2020年のノーベル経済学賞の受賞者は、ポール・ミルグロムとロバート・ウィルソンでした。この2人の研究の中で光が当てられたものが「オークション理論」と呼ばれるものです。ここで、この「オークション理論」について、ノーベル賞の授賞内容をもとに紹介したいと思います。
授賞内容には2つの大きな柱があります。ひとつは「オークション」に関する理論の発展に貢献したこと、もうひとつは、今までオークションが使われていなかった分野で、オークションを活用するという「オークションのデザイン」という研究です。
さまざまなオークション方式
皆さんにとっていちばん馴染み深いオークションの方式は「競り上げ式」といわれるものではないでしょうか。これはイギリス式とも言われます。美術品やアンティークの品物などを販売する際に使用されています。購入希望者がより高い価格を提示して、競り上げていく方式です。これ以上、高い価格が出なくなったときに、いちばん高い価格を付けた人がその価格で落札します。
その他にもオークションにはさまざまな方式があり、たとえば「競り下げ式」(オランダ式)は、花の卸売市場や中古車市場などで使われている方式です。会場に大きな時計があり、その時計の動きに合わせてだんだんと表示されている値段が下がっていきます。購入希望者は、購入したい価格になるとボタンを押して、その価格で落札するという方式です。いちばん最初にボタンを押した人が落札できます。
その他にも「1位価格方式」「2位価格方式」などがあります。どちらも「封印入札」と呼ばれているもので、決められた期日までに、入札者が購入希望価格を提出します。期日になったところで、販売する人は、入札された購入希望価格を確認して、いちばん高い入札額の人に販売するという方法です。購入希望者が、他の購入希望者の入札価格を知らないという点が、競り上げ式のオークションと異なります。
「1位価格方式」では落札者がいちばん高い価格、つまり、自分の入札額を支払います。「2位価格方式」では、やはりいちばん高い価格を入札した人が落札しますが、この場合、入札された価格の中で2番目に高い金額を支払うことになります。「2位価格方式」の場合、自分の購入希望価格を正直に提出することが最適戦略であることが知られています。