みなさん、お待たせしました。ブルーバックス探検隊、ただいま帰ってまいりました!(あれ、どこか行ってたっけ? なんてツッコミはやめてください)
少しお会いしない間に世界は大変なことになってしまいましたが、また元気を出して、おもしろ研究をご紹介していきます。
新シリーズのトップバッターは、生命のサイエンスど真ん中の研究です。私たちの細胞の中にあるミトコンドリアは、大昔には独立した生物だったことはみなさんも聞いたことがあると思います。それがいつしか、ほかの生物の細胞に入り込んでしまうまでのプロセスとは、どのようなものだったのか? 私たちの祖先は何をしたのか? 生命進化の大きな謎に迫ります。
「ドメインが、1つ減るかもしれない」だって!?
われわれ人類は数ヵ月前から、それはもうウンザリするほど毎日、ウイルスと向き合って暮らしている。多くの情報が飛び交い、おかげで知識も増えてきた。だから、まさかいまだに細菌とウイルスの区別がついていない人はいないだろう。……い、いないよね?
いちおう言っておくと細菌は「生物」だが、ウイルスはいまのところ「非生物」とされている。それについてはいろいろ複雑な議論もあるようだが、少なくとも、地球上の生物を分類する「3つのドメイン」のいずれにも、ウイルスは入っていない。
「ドメイン」というのは生物を分類する階級で、下から種・属・科・目・綱・門・界ときて、いちばん上がドメインだ。なぜかそこだけ漢字1字ではないことは、まあ気にするな。ドメインには「真核生物」「バクテリア」「アーキア」の3つがある。
このうち真核生物とは、細胞の中に核をもつ生物で、動物や植物、あるいはミドリムシやゾウリムシなどの原生動物、そしてカビなどの菌類がそうだ。もちろん、われわれ人間もこのドメインに含まれる。
バクテリアとアーキアは、いずれも単細胞で、真核生物と違って細胞に核をもたない「原核生物」だ。その意味では似た者どうしなのだが、細胞膜脂質や遺伝子などが大きく異なるので、ドメインは別になっている。バクテリアはいわゆる「細菌」であり、アーキアはかつて「古細菌」と呼ばれたこともあった。
そしてくどいようだが、ウイルスはどっちでもない。もし、仮に、今後「やっぱウイルスは生物!」という決定がなされたとしても、それはバクテリアでもアーキアでも(もちろん真核生物でも)ない「4番目のドメイン」となるであろう。
ところが、実はそれとは逆に、生物のドメインの数が「3」から「2」に減るかもしれない事態が起きているというのである。それが、今回の探検のテーマだ。
その真相に迫るため、探検隊はさっそく、産業技術総合研究所の生物プロセス研究部門 生物資源情報基盤研究グループの研究員・延優(Masaru K. Nobu)さんと、同グループ長の玉木秀幸さんを訪ねた。