新年あけましておめでとうございます! 本年も科学書およびウェブメディア「ブルーバックス」をよろしくお願いします。
令和2年最初の記事は、おなじみ「ブルーバックス探検隊」。初日の出の光すら吸収してしまう「究極の暗黒シート」開発者を訪ねました。
暗黒材料の裏側で活躍する「計量標準」とはなにか? ごゆっくりお楽しみください。
令和2年最初の記事は、おなじみ「ブルーバックス探検隊」。初日の出の光すら吸収してしまう「究極の暗黒シート」開発者を訪ねました。
暗黒材料の裏側で活躍する「計量標準」とはなにか? ごゆっくりお楽しみください。
まるで穴のような「暗黒シート」
ブラックカードやブラックホールを持ち出すまでもなく、人は不思議と「ブラック」に惹きつけられる。本物の暗闇、暗黒は、奥行きが知れない。黒は、人を惹きつけるとともに底知れない恐怖も感じさせる。不思議な色だ。
この「ブラック」の世界で、より黒い物質の競争が盛り上がっているという。
そこで「究極の暗黒シート」を開発したという人に会いに行った。産業技術総合研究所・物理計測標準研究部門の雨宮邦招・研究グループ長である。
どんなシートなのか。暗黒とはどういうことなのか。疑問は次々とわいている。
雨宮さんはまず、話題の「暗黒シート」を見せてくれた。比較のために並べてあったのは、ごく普通の黒いゴムシート。2枚ともコースターのような10cm四方の薄いシートだ。
一見、同じに見える2つの黒いシート。
— 産業技術総合研究所(産総研) (@AIST_JP) 2019年8月21日
ライトで照らしてみると・・・?
右側が「光閉じ込め構造」を持つ特別なシート、
その名も「究極の暗黒シート」です! pic.twitter.com/XOItmr7b72
一目見て、ゴムシートのテカリが目立つ。一方の「暗黒シート」は、照明の反射がないので、もしかしたらシートの下に奥行きがあるのではないかと思ってしまう。
「暗黒」の不思議な手触り
「触ってみてください」と爽やかで落ち着いた雨宮さんの声が響く。
雨宮さん
おそるおそる触ってみると、ツルツルしているゴムシートに対して「暗黒シート」はビロードのような感触がある。不思議な手触りだ。ザラザラしているわけではなく、ツルツルしているわけでもない。
「暗黒シートの表面にはミクロの凹凸がつけてあります。これが光を吸収する構造になっているのです」
電子顕微鏡でみた暗黒シートの表面(画像:産総研提供)