新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。
今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。
ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、2013年の噴火で、その姿を大きく変えてしまった西之島の調査にを取り上げます。
※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。
火山島として生き残る島、消滅する島
火山噴火が新たな島を生むという現象は、じつは日本近海でたびたび起きている。約半世紀前の1973年に同じ西之島のほぼ同じ場所で島が誕生し、注目を集めた。この島は、2013年以降の噴火で新しい溶岩に飲み込まれてしまったが、それまでは「新島誕生」を象徴する存在として知られていた。
さらに時代を遡り、1930年代には、鹿児島県南方の薩摩硫黄島近海での海底噴火により、昭和硫黄島と呼ばれる小島が誕生し、今なお存在している。この「新島誕生」は、戦前の激動の時代の中、新聞でも大きく取り上げられた。
2021年8月には西之島よりさらに南にある福徳岡ノ場で大規模な噴火が発生し、奇しくも新島が誕生したが、この島は残念ながら4ヵ月ほどのうちに海面上から姿を消してしまった。
そして2023年10月には、そのすぐ近くの火山、硫黄島の沖合で海底噴火が発生し新島が生まれた。西之島や福徳岡ノ場の噴火の時と同様に島の存続に注目が集まったが、この島も永く残ることはなさそうだ。
できたばかりの島は大きく成長する前に海蝕(かいしょく)により短期間のうちに消滅してしまうこともある。実際にはこのような例の方が多く、とくに伊豆小笠原地域では新島の誕生の傍らで新島の衰退と消滅も同じように起きている。
このように、全ての新島が「島」として残れるわけではなく、波に打ち克てるだけの強固な基盤を、火山噴火によってつくることができるかどうかが、「島」として存続できるかどうかを決めている。
西之島は、近年の噴火により大量の溶岩を流出し、堅牢な島を創り上げた。その噴火活動は、火山島のでき方、つまり新島が誕生し、成長し、生き残るための条件を知る上で、貴重な機会を私たちに提供している。