ここ数年「中学受験率」は上昇し続け、何かと話題になることが多い。子どもが頑張れるのであれば成長のきっかけになるが、無理やりやらされている…と感じている場合は親子関係が悪化し、その後に大きな影響を及ぼすことにもなりかねない。
激化しているように見える受験事情だが、少しずつ変化も見え始めている。たとえば子どもの希望校だけを受ける「ゆる中学受験」や「高校受験」という選択をする家庭も増えてきているというのだ。特に注目は、Xで4.5万人のフォロワーを持つ“東京高校受験主義(東田高志) ”さんが提案する「戦略的高校受験」だ。
自身の著書『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと: 4万人が支持する塾講師が伝えたい 「戦略的高校受験」のすすめ』(Gakken)では、【小学生の数学学習は最後のブルーオーシャン】で、ーSAPIX偏差値を取るよりも、小学生のうちに中学数学を学び終えるほうが簡単で実現性がありますーと語られているが、それはなぜなのか。書籍から抜粋し、一部修正して3回にわたってお届けする、2回目。
1回目を読む
前編【中学受験をしないからこそ身に付く力がある…「戦略的高校受験」という新アプローチ】
後編【公立中→高校受験の「黄金」ルートに向け、小学校高学年は「自立学習」を身につける時期】
最強の小学生「数学先取り」戦術
小学生の算数学習ロードマップの頂点、レベル3は中学・高校の数学学習です。ここまで到達するのは、学習意欲が旺盛で、算数・数学が得意な子や、中学受験から高校受験に方針を変更した上位層です。
「 実際に、小学生が数学を学ぶことは可能なのか?」と疑問に思う親御さんも少なくないでしょう。実は、中学受験算数よりも中学数学のほうが簡単です。実際、中学受験の独特の解法に苦戦していた小学生が、方程式を学び、未知数を文字に置き換える手段を得ることで、息を吹き返したという話をよく聞きます。
小学校卒業までに中学数学を終わらせる
難関中学の一つの指標になっているSAPIX偏差値を取るよりも、小学生のうちに中学数学を学び終えるほうが簡単で実現性があります。それだけ、中学受験算数は独自の進化を遂げており、対処が難しいのです。素養のある子であれば、小学校を卒業するまでに中学数学を完了させ、中学入学と同時に高校数学に進むことも夢ではありません。
上の図はその学習のモデルケースです。中高一貫教育の学校のカリキュラムよりも2年、そしてそのトップクラスのグループである鉄緑会組と比べても1年分の余裕を持った学習進度で、数学学習が可能です。