みんな感じている「じつはわかりづらい」生成AIの使い道…ビッグテックが爆走中の「使いやすさ向上レース」と沈黙するアップルの「次の手」
生成AIは「どこにどう使うべき」なのか
5月中旬からの2週間、いずれも米国で開催されたGoogleとマイクロソフトの開発者会議を連続して取材してきた。
両社のテーマは共通している。生成AIを初めとしたAI技術を、「いかに普通の人が使うものにするか」だ。
生成AIがブームになってまもなく2年が経過するが、利用者の数は限定的だ。コストやハードウエア面の要因もあるが、最も大きいのは「どこにどう使うべきかがわかりづらい」ということかもしれない。
生成AIの「賢さを磨く」競争は今も続いているが、一方で「いかにAIを使いやすくするか」という競争も始まっている。そうした動きについて、Googleとマイクロソフトというビッグテック2社の動きから解説してみよう。
「Geminiの時代」
まずはGoogleから。
同社は5月14日・15日の2日間、米マウンテンビューにあるGoogle本社近くのショアライン・アンフィシアター(Shoreline Amphitheatre)にて、年次開発者会議「Google I/O 2024」を開催した。
話題の中心になったのは、Googleの生成AI技術である「Gemini」だ。
Geminiは、2023年のGoogle I/Oで発表され、昨年末に利用可能となったものだ。去年はGeminiの前身にあたる「LaMDA」を使っていたし、各種AIサービスのブランド名はバラバラだったが、今年はすべてが「Gemini」に統一される。
検索情報をまとめる「AI Overview」にも、GmailやGoogleドキュメントをサポートする機能にもGeminiが使われるし、もちろん、チャット型サービスとしての「Gemini」も性能が強化されていく。
また、スマートフォンなどで使われているOS「Android」にもGeminiの統合が強化され、カメラで映した対象物を「Google検索」に見せながら、名前のわからないものについて調べる「Ask with Video」などの機能が追加される。
Googleのスンダー・ピチャイCEOは、Google I/Oの基調講演で「GoogleはThe Gemini Era(Geminiの時代)に入る」と語った。高らかにそう宣言するほど、同社のサービス・技術開発全体が、Geminiという生成AIを核として進化していく時代になった……ということだ。
「Copilot」に全力を注ぐマイクロソフト
生成AIを軸とするのはマイクロソフトも同様だ。
マイクロソフトは5月21日から23日まで、米シアトル市内で開発者会議「Build 2024」を開催した。同社のサティア・ナデラCEOは、「Copilotは3種類ある。1つはサービスとしてのCopilot、次に企業のアプリケーションに入っていくCopilot、最後がPC上で動作するCopilot+ PCだ」と説明した。
どれも同じ名前だが、「Copilot」はマイクロソフトの生成AI技術のブランドだ。ウェブから検索や画像生成として使えるCopilotもあるが、企業向けに生成AIを提供するための技術でもある。
特に大きいのが、最後の「Copilot+ PC」。これは、PCでの生成AI活用を促進するものだ。これについては、あえて後ほど解説する。