もしも「地球外生命」が見つかったら…原始地球で繰り広げられた「生命誕生のシナリオ」は、どう塗り替えられるのか

もしも地球外生命が見つかったら……

火星やエウロパなどに生命が見つかったら、別の角度からも生命の起源へのヒントが得られます。比較的容易にわかるのは、地球外で見つかった生物がタンパク質のようなものを用いているかどうかです。

アミノ酸は天体や星間でできやすい分子なので、地球外生命もこれを使っている可能性は高いと考えられますが、もしアミノ酸を使っていなければ、これまでの生命に関する常識を大きく変える必要が生じます。また、アミノ酸を使っていた場合も、その種類によっていろいろな可能性が見えてくるはずです。

もし火星生命が使っているアミノ酸の種類が地球のものと同じで、かつ左手型*だった場合は、地球生命と火星生命が同じルーツを持っている、もしくは地球生命が火星に持ち込まれたものである可能性が高いでしょう。アミノ酸の種類が地球生命が使っているものと異なっている場合は、地球生命とは独立に誕生した生命と考えられます。

*左手型(のアミノ酸):こちらの記事〈今度こそ「素手もほこりも、ぜったい禁止」にしたら…なんと、大量に降り注いできた隕石から「核酸の材料」が見つかった〉参照

地球と異なる右手型のアミノ酸をおもに使っているとすれば、アミノ酸に右手型と左型がある非対称でること(不斉)の起源についても影響します(不斉や、地球上のアミノ酸が左手型過剰である理由とされる「円偏光」や「スピン偏極粒子」については、『生命と非生命のあいだ』の第5章をされたい)。アミノ酸がラセミ体(右手型・左手型が同じ量)ならば、それは生命由来ではなく化学反応でできたものでしょう。

より興味深いのは、地球外生命が核酸を用いているかどうかです。核酸といっても、構成する糖や塩基の種類は、地球生命のものと異なるかもしれません。また、糖が地球生命と異なり左手型を使っているかもしれません。

そうだとしても、地球生命とは異なるルーツを持つ生命が、やはり核酸に類似した物質を使っているとすれば、そのような物質を用いた生命が宇宙で普遍的である可能性が高まります。

しかし一方で、まったく異なる自己複製分子を用いていたとすれば、私たちの生命に対する考え方は大きく変わらざるをえないでしょう。

マーズ・ローバーの撮影した火星地表マーズ・ローバーの撮影した火星地表。前方の小山は「サンタクルーズ」と呼ばれる photo by NASA

「第2の生命」発見が与える影響

もしエウロパやエンケラドゥスに生命が見つかった場合は、生命の誕生には陸地が必要と考える、生命の陸上温泉起源派にとっては大きな痛手となり、海洋起源派が勢いづくでしょう。

逆に、火星に生命が見つかった場合は、原始火星の海がそれほど深くなく海底熱水系がなかったとすれば、陸上温泉起源派に有利な材料といわれています。

ただ、原始火星の海の深さには諸説あるうえ、火星には地表から27kmも高くそびえ立つオリンポス山のような山があることを考えると、海底熱水系がある可能性は否定できませんので、どちらに有利とは断定できないでしょう。

いずれにせよ、太陽系での「第2の生命」の発見は、私たちの生命観や生命起源の考え方を大きく変えることは間違いありません。

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