果たして、マグマはどのようにできるのか…簡単には溶けない岩石をドロドロにする「3つの方法」
地球の大陸は謎だらけ。
地球表面を構成する岩石は、海洋底と陸で明確に異なる。火星や金星の表面を覆う岩石は、地球の海洋底の岩石と同じ「玄武岩」。地球の陸地を構成する「安山岩」は、火星や金星には存在しない。ほかの惑星には存在しない安山岩に、地球表面の3割が覆われている。
地球にはなぜ安山岩があるのか?
岩石学者の田村芳彦氏がその謎に挑んだ書籍『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』が講談社ブルーバックスから刊行された。刊行を記念して、本書の読みどころを厳選してお届けする。
※本記事は、『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
岩石はなかなか溶けない
地球の中身は大きく3つの層に分かれています。いちばん外側を覆う薄い岩石層を「地殻」といい、その下の「マントル」と区別されます。マントルも岩石層ですが、おもにかんらん岩で構成されています。
マントルの大部分は固体ですが、マントル由来のマグマ(液体)を噴出する火山があることも事実です。なんらかの理由で、マントルは局所的に溶けます。マントル(かんらん岩)が溶ける理由は、マグマの成因を理解するうえで重要です。
岩石が溶ける理由は、ひと言でいえば「その温度が融点を超えたから」です。岩石は氷(固体の水)と同じように、温めると溶けます。岩石を溶かすには最低でも1000℃以上にする必要がありますが、何度まで温めると溶けるのかを言い切ることはできません。なぜなら、岩石の融点には幅があるからです。つまり、固体か液体かの2つの状態だけではなく、固体と液体が共存する温度が数百度もの幅をもつのです。この点については、あとでくわしく述べます。
さらに、岩石に限りませんが、物質の融点は条件によって変化します。たとえば、氷の融点は0℃と思いがちですが、変化させることができます。条件しだいでは、水は氷点下でも液体の状態を維持するのです。大雪が予想される際などに道路にまかれる融雪剤は、氷の融点(凝固点)を下げるため(凝固点降下)、雪を溶かします。岩石の融点も条件によって変化するので、溶けはじめる温度は一意には決まりません。(後述)。
ともあれ、岩石が高温条件で溶けやすいことは間違いありません。そして、図1のように地球内部では深さとともに温度が上昇します。
温度が上昇するのであれば、地球深部でマントル(かんらん岩)が溶けるのも不自然ではない気もします。しかし、地下で深さとともに上昇するのは温度だけではありません。圧力も上昇するのでした。かんらん岩の融点は圧力の影響で変化し、深さとともに岩石は溶けにくくなります。
結局、地温勾配(深さによる温度上昇)ではかんらん岩は溶けません。かんらん岩を溶かすには、なんらかの方法で局所的に融点を超える状態をつくり出す必要があります。マントルの溶かし方を説明する前に、岩石が溶けるとはどういうことか考えておきましょう。