まさか、宇宙の生命体の痕跡ではあるまい…隕石の中にあるアミノ酸が「できるまで」を再現した「衝撃の実験」

「地球最初の生命はRNAワールドから生まれた

圧倒的人気を誇るこのシナリオには、困った問題があります。生命が存在しない原始の地球でRNAの材料が正しくつながり「完成品」となる確率は、かぎりなくゼロに近いのです。ならば、生命はなぜできたのでしょうか?

この難題を「神の仕業」とせず合理的に考えるために、著者が提唱するのが「生命起源」のセカンド・オピニオン。そのスリリングな解釈をわかりやすくまとめたのが、アストロバイオロジーの第一人者として知られる小林憲正氏の『生命と非生命のあいだ』です。本書刊行を記念して、その読みどころを、数回にわたってご紹介しています。今回は、隕石や彗星に含まれるアミノ酸がどうやってできたのかを考察してみます。

【書影】生命と非生命のあいだ

*本記事は、『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

一部にみられた左手型過剰

ミラーの実験などでは、アミノ酸は左手型と右手型が同じだけ生成しました。しかし、その後の化学進化でペプチドやタンパク質をつくるときは、両方を混ぜるとうまく構造ができません。

隕石や小惑星などに含まれていたアミノ酸も、左手型と右手型が同量含まれるラセミ体でした。このことは、宇宙でできたことの証明にはなりますが、その後の化学進化を考えると困ったことになります。これらのアミノ酸では生命はつくれないことになるからです。

地球生物がなぜ左手型アミノ酸を使うようになったか。この問題の解決になるかもしれないことが1997年に発表されました。アリゾナ州立大学のジョン・クローニン(1937〜2010)らは、マーチソン隕石中のアミノ酸をもう一度、丁寧に分析しなおしました。この隕石からは90種類ほどのアミノ酸が検出されていて、そのうち、タンパク質アミノ酸は12種類でした。

クローニンたちは、一部のアミノ酸に左手型が右手型よりも多く含まれていることを見つけました。もしそれらがタンパク質を構成するアミノ酸なら、地球上での汚染が疑われます。

しかし、タンパク質アミノ酸には左手型過剰は見られませんでした。左手型過剰が見つかったのは、イソバリンなどの特殊な非タンパク質アミノ酸にかぎられていたのです。

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