あの時代になぜそんな技術が!?
ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか?
現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さん(ノースカロライナ州立大学終身教授)による、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行され、続々と重版を重ねています!
それを記念して、両書の「読みどころ」を、再編集してお届けします。数回にわたってお届けしているインカの石積み技術ですが、最終回である今回は空中都市として有名な「マチュ・ピチュ」を見てみます。
マチュ・ピチューー農作に隠された智慧
「マチュ・ピチュ」(ケチュア語で「老いた峰」)は、アンデス山麓に属するペルーのウルバンバ谷に沿った標高約2500メートルの高い山の尾根に位置している。約13平方キロメートルにわたって拡がり、約200の石造建築物から成る15世紀のインカ帝国の遺跡である。全貌を示した図「マチュ・ピチュ全景」の中央に見えるのは標高2720メートルの「ワイナ・ピチュ」(若い峰)である。
マチュ・ピチュは山裾から遺跡の存在が確認できないことから、しばしば「空中都市」「空中の楼閣」「インカの失われた都市」などとよばれている。しかし、標高についていえば、「空中都市」マチュ・ピチュはクスコがある標高3600メートルより約1100メートルも低地にある。マチュ・ピチュは、現在のペルーのジャングルの平地からクスコまでの道のりの中間点に位置している。
そのようなマチュ・ピチュが「空中都市」や「空中の楼閣」とよばれるのは、その景観(本ページの写真参照)による。なお、2012年6月、マチュ・ピチュ近郊で同様のインカラカイ遺跡が発見され、これからマチュ・ピチュのような遺跡が続々と発見されるのではないかと期待されている。