1万リットルの血液と胃の微生物が牛乳になる!
いやエネルギー源と脂肪源は分かるけど、タンパク質はどうなの、と思われますね。
牛のタンパク質源については、人間と同じで小腸から吸収されるアミノ酸が元になります。ただし、牛の場合、アミノ酸になるまでが人間とは全く違います。牛が食べた草の中にあるタンパク質は反芻胃の中で一旦かなり小さな物質であるアンモニアにまで分解されます。そのアンモニアを利用して反芻胃の中に棲んでいる微生物がタンパク質を合成して微生物自身が増殖します。ここで増殖した微生物が反芻胃から出ていき、消化吸収され牛のタンパク質源になります。
つまり、牛乳に含まれるタンパク質のもとは牛の胃に棲んでいる微生物、さらに元をたどれば草になります。
こうして牛の体に吸収された様々な栄養素が溶け込んだ血液を元にして、乳房で乳がつくられます。牛乳パック1本分(1リットル)の牛乳をつくるのに必要な血液はおよそ400~500リットル。乳牛は1日に平均して20~30リットルの乳を出すので、なんと毎日約1万リットル(!)の血液が乳房に送り込まれている計算です。ちょっと想像しにくい量ですね。
以上から、牛の栄養消化、吸収、利用、そして牛乳に含まれる栄養素がどこから来るかについて理解して頂けたと思います。やや迂回的でまどろっこしい栄養の獲得をしていますが、これが「牛乳は草からできている」理由です。
これだけ人間とは全く異なる動物だから人間の仲間になった、なってくれたのだと思います。ただし、現在の乳牛は年間に10,000kgちかくの牛乳を生産するように改良されてきています。そうすると、草だけでは栄養が全く足りないので、多くの穀物(トウモロコシや大豆など)を与えることが当然のようになってきました。そのおかげで乳牛が病気になりやすくなったり、寿命が短くなったりしています。
牛は産業動物だからしょうがないという意見も分かりますが、牛が僕たちの仲間になった理由「牛乳は草からできている」を忘れずにいたいものです。そうすることで、これからも牛が僕たちの仲間で居続けてくれるような気がします。