深海にもプラスチックの溜まり場が! 海のプラスチック汚染を可視化する

深海底や中層に溜る永遠に消えないごみ

安価で丈夫なプラスチック製品は、私たちの生活を便利にしました。その一方で、海に流出した大量のプラスチックごみが、さまざまな問題を引きおこしています。海がプラスチックに汚染されるのを防ごうと、世界的に「脱プラスチック」の動きが加速しています。

JAMSTEC海洋生物環境影響研究センター海洋プラスチック動態研究グループでは、深海のごみ溜まりを調査するなどして、海のプラスチックごみの状況を明らかにしようとしています。同グループのグループリーダーである中嶋亮太主任研究員に、汚染の現状や海に流出したプラスチックが生物におよぼす影響などについて聞きました。

(取材・文:福田伊佐央)

【写真】中嶋亮太主任研究員中嶋亮太主任研究員(撮影:神谷美寛/講談社写真部)

深海を漂う大量のレジ袋

まずはこの映像を見てください(図1)。

これは駿河湾の水深2000メートルの映像です。次々と横切っていく白いものは、いわゆるレジ袋です。次から次へと流れてきますよね。レジ袋だけでなく、お菓子の袋も流れています。海へ流れ込んだプラスチックごみはやがて深海の海底へと到達するんです。ちなみに黒っぽいものも横切りますが、それはクラゲです。

【写真】駿河湾の水深2000メートルの映像図1 駿河湾の水深2000メートルの映像。2023年8月撮影。(提供:JAMSTEC)
図1駿河湾の水深2000メートル

ーー深海にこんなにレジ袋が落ちてるんですか!?

プラスチックごみは海面に浮かんでいて、最終的に海岸などに打ち寄せられるイメージがあるかもしれませんが、実際に行き着く先は深海なんです。レジ袋が沈むって、想像できないですよね? 最初は浮いていたプラスチックごみも、藻類やフジツボなどの生物が付着したりして、やがて重くなって沈みます。深海にいけば、場所にもよるのですが、たくさんの白いレジ袋を見ることができます。

海の表層をネットですくってみたら!

はっきりと目に見える大きなプラスチックごみだけではありません。大きさが5ミリメートル以下の「マイクロプラスチック」も、至るところで海を汚染していることが明らかになっています。

下の映像は、日本の南の海上で、目の細かいネットを使ってマイクロプラスチックを集めたときの様子です(図2)。一見、青く澄んだ透明できれいな水に見えますが、20分ほどネットを曳いただけで、手のひらいっぱいのマイクロプラスチックが集まりまることはよくあることです。

【写真】マイクロプラスチックを採取する様子図2 ニューストンネットという網をつかって、マイクロプラスチックを採取する様子(提供:JAMSTEC)

動画:「『しんかい6500』で撮影した、ニューストンネットによるマイクロプラスチックの採取」はこちら

ーー見た目では全然わからないですね。

そうなんです。見た目にはよくわらかないけど、こうして網を曳くと、海表面には小さなプラスチック粒子がたくさん浮いている。私たちの調査では、北極海でも南極海でもマイクロプラスチックの存在を確認しています。ありとあらゆる場所に散らばっていますね。

海の表面だけではありません。これらはやがて沈んでいくため、深い海の中にもたくさんあることが最近わかってきました。中深層の海水の中にも、深海底の堆積物の中からも、マイクロプラスチックがたくさん見つかっています。石油でできたプラスチックは微生物に分解されてないため、永遠に消えないごみとして、海の中に留まり続けています。それが海のプラスチック汚染の現状です。

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